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放射線利用し燃料電池に適した電解質膜開発

2008.09.22

 燃料電池の性能と耐久性向上につながる高分子電解質膜の開発に、日本原子力研究開発機構の研究グループが成功した。環境にやさしい動力源として期待されている家庭用燃料電池やエコカー開発に大きく貢献する成果だと研究グループは言っている。

 燃料電池は燃料の水素が一方の電極で水素イオンと電子に分解、この電子が外部回路を通過する際、電気を発生する。水素イオンの方は、電解質膜を通過してもう一方の電極に移動、そこで空気中の酸素と反応して水となる。無害な水ができるだけで、有害な物質は何も出さないため、次世代の動力源として期待されている。燃料電池の普及には、大幅なコスト削減に加え、特に電解質膜の高温環境下(家庭用:80℃、自動車用:100℃以上)での耐久性と安定稼動、さらに出力特性の向上が大きな課題となっている。従来から使われているフッ素系高分子電解質膜は、高温での劣化が激しく、さらに出力向上や水素イオン通過の効率向上のために添加されるイオン伝導基によってもろくなる弱点を抱えていた。

 日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門高導電性高分子膜材料研究グループの前川康成リーダー、浅野雅春研究主幹、陳進華研究副主幹らは、放射線の力で高分子に特定の機能を付与できる放射線グラフト重合技術に熱クラフト重合法を加える工夫で、従来のフッ素系高分子電解質膜に比べ、導電性が1.5倍、膜強度が2.3倍高い高分子電解質膜の開発に成功した。

 この電解質膜を燃料電池セルに組み込んで発電試験を実施した結果、家庭用燃料電池に必要な作動条件(80℃)で4万時間以上の安定運転が可能であることを確認した。湿度が低い条件でも電解質膜を使用できることも確認されたことで、加湿システムが簡素化でき、システム全体の大幅コスト削減も実現できるという。

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