安くて寿命も長い燃料電池用電解質膜を谷岡明彦・東京工業大大学院理工学研究科教授が、開発した。
燃料電池は、陽極と陰極の間を電解質膜がさえぎる構造をしている。通常、燃料として使われる水素が、陰極で水素イオンと電子に分解され、水素イオンが電解質膜を通って、陽極へ移動する。
自動車や携帯電子機器用に開発が進められている固体高分子型の燃料電池では、この電解質膜にフッ素系材料が広く使われている。価格が非常に高いため、燃料電池の低価格化の障害となっていた。
谷岡教授は、フッ素系材料の代わりに安いポリスチレンを使うことを考えついた。ただし、そのままでは、電極で発生する過酸化水素ラジカル(遊離基)のために劣化されてしまい、寿命が短いという問題が残る。
問題解決のため、60個の炭素原子がかご状に結合した材料として最近注目されているフラーレンをポリスチレンに混ぜた。このフラーレンが、過酸化水素ラジカルをつかまえてしまうことから、電解質膜の劣化を抑えることが可能になった。