ウナギの祖先は元々深海で住んでいた可能性が高いことを、東京大学海洋研究所と千葉県立中央博物館の研究チームが突き止めた。
深海で住んでいた先祖が極端に餌の乏しい熱帯の外洋中・深層を見捨てて、餌が豊富な熱帯・亜熱帯の淡水域で成長し、しかし産卵だけは遠い昔から慣れ親しみ、しかも外敵が少ない安全な外洋の深海で行う。ウナギは異なる2つの環境をうまく利用するように進化してきたと考えられる、と研究チームは言っている。
東京大学海洋研究所の塚本勝巳教授、西田睦教授、井上潤研究員(現ロンドン大学)、宮正樹・千葉県立中央博物館上席研究員らは、ニホンウナギを含むウナギ属19種に加え、アナゴ科、ウツボ科、ウミヘビ科なども含めた56種の標本を世界中から集め、細胞中に含まれるミトコンドリアのDNA全塩基配列を調べ上げた。
この結果、これら56種は最終的には同じ祖先から枝分かれしてきたと見られるものの、ウナギ属は浅海や大陸棚に生息し外見も似ているアナゴ、ハモ、ウツボなどとは遺伝的には遠く、むしろシギウナギ、ノコバウナギ、フウセンウナギ、フクロウナギ、タンガクウナギ、ヤバネウナギなどの深海魚と近縁であることが分かった。これら深海魚は外洋の水深200-3,000メートルに生息している。ウナギという名がついているものの、巨大な口やくちばしのような顎(あご)を持つ体型から、これまでウナギ属とは全く遠い種と考えられていた。
ウナギが生息する川や湖から数千キロも離れた外洋で産卵することは、生まれたてのウナギの幼生がマリアナ諸島沖の西部北太平洋で見つかったのに続き、一昨年9月、水産庁開洋丸による同海域の調査で初めて成熟したニホンウナギが採集されたことで確実視されている。しかし、なぜウナギがこのような大規模な回遊を行うのかは長い間、謎とされてきた。