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酪農排水浄化の人工湿地システム開発

2009.11.19

 酪農家から出る糞(ふん)尿や牛乳などを含む高濃度有機性排水を、年間を通じ河川放流が可能なレベルまできれいにする人工湿地システムを農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センターなどが開発した。

 北海道別海町と遠別町での現地試験で、排水中の有機物を9割以上、窒素やリンを6-8割低減できることが確認されている。50-400頭の牛舎についてそれぞれこのシステムの費用を試算したところ、既存の機械的排水処理法と比べ、初期費用が半額未満、運転費用が5分の1未満で済む、という。

 北海道農業研究センターが北海道大学、畜産施設販売会社「たすく」、北海道立根釧農業試験場、遠別町と共同で開発したシステムは、自然の浄化能力を利用している。伏流式の人工湿地濾(炉)床にはヨシを植えているが、ヨシを利用する従来の方法では、有機物による濾床表面の目詰まりのため冬季には凍結が起きてしまうほか、リンの浄化は主に吸着によっているためいずれ濾床の吸収能力が限界に達してしまうといった難題を抱えていた。

 新システムは、ガラスのリサイクル資材や発泡コンクリート資材など水に浮かぶ資材を用いて濾床の目詰まりと凍結を防止できる。さらに濾材に吸着して蓄積したリン酸は炭酸カルシウムなどで吸着・回収するなど浄化率を高める新しい仕組みが取り入れられている。この結果、年間を通じ狭い面積で効率よい運転が可能な人工湿地浄化システムを実現させた。回収されたリン酸は肥料として用いることもできるという。

 日本の食糧自給率は先進国中最低水準で、穀物輸入の中で特に多い飼料用穀物の輸入は世界貿易全体の13%も占めている。2007年11月に日本学術会議の生産農学委員会畜産学分科会は報告書「わが国食料生産における資源循環型畜産技術の開発と地域活性化」の中で「飼料の輸入依存が、家畜飼養と作物生産を乖(かい)離させる結果、畜糞(ふん)の堆肥化という資源循環を妨げ、農村地域の衰退だけでなく、動物や水質など環境へ悪影響を与える窒素の過剰な蓄積を招く恐れがある」と指摘している。

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