養豚農家などの畜舎から出る排水を簡単な設備を付加するだけでさらに浄化できる技術を、農業・食品産業技術総合研究機構の畜産草地研究所が開発した。
新しく開発された排水処理法は、現在、養豚農家で通常使われている浄化施設に2つの槽を付加するだけでよい。硝酸性窒素とリン酸を除去するための材料は、市販品を利用しているのが特徴だ。
第1槽は、園芸店などでも売られている土壌改良資材であるパーライトの表面に、硫黄と炭酸カルシウムをコーティングした粒状資材を詰めている。この資材表面に自然繁殖するに硫黄酸化細菌によって硝酸性窒素が除去され、茶褐色の排水もわずかながら色が薄くなる。第2槽では、軽量発泡コンクリートを製造する際の副産物として市販されているケイ酸カルシウム含有資材がリン酸を吸着して除去し、酸性化した排水を中和する効果がある。これら2つの槽を付加することで通常の排水処理を行った後になお残っている窒素とリンが最大95%程度除去されるという。
畜産草地研究所は、東京農業大学、群立機器、クリオンと協力し、実用化を検討している。
日本の畜産業は飼料を輸入に頼っており、畜糞(ふん)の堆肥化という資源循環も行われない結果、水質や土壌への過剰な窒素の蓄積という悪影響が心配されている。畜舎からの排水については、全国一律の水質基準が定められているが、自治体によってはさらに厳しい水質基準を課している地域もあり、これらの地域の畜産農家は排水中の窒素・リン濃度を通常の処理を行った場合よりもさらに低下させることが求められている。