人体や家畜に有害な硝酸性窒素と亜硝酸性窒素による地下水の汚染が進んでいることが、環境省の調査で明らかになった。
全体的な状況を把握する「概況調査」の結果、項目別でもっとも汚染された割合が高かったのが硝酸性窒素・亜硝酸性窒素で、調査した井戸の4.3%から環境基準を超える量が検出された。
汚染が確認された後の監視などを行う「定期モニタリング調査」の結果も同様で、調査対象の井戸約1,700本の41.3%にあたる715本の井戸から、環境基準を超える硝酸性窒素・亜硝酸性窒素が検出された。これは前年に比べ、5.4ポイント、約60本の増加となっている。
硝酸性窒素は動物には有害だが、植物は不可欠な栄養分である窒素を硝酸性窒素の形で取り込み、タンパク質の合成に利用している。このため、農作物の肥料として利用されている。しかし、施肥が過剰になると、硝酸性窒素のまま植物体内に蓄積され、それを食べた家畜や人体に悪影響を与える恐れがある。
近年、輸入飼料の増加などにより、日本の農業における家畜飼養と作物生産の乖(かい)離が進んだ結果、畜糞(ふん)の堆肥化といった資源循環が妨げられ、硝酸性窒素の植物への過剰な蓄積や地下水や河川水汚染を招く恐れが高まっていることを警告する日本学術会議の報告書も出たばかりだった。