食料、飼料の輸入依存が環境破壊と農村社会の疲弊を招いていることに危機感を持つ日本学術会議が、食料、飼料の自給率向上によって循環型社会の構築を目指すべきだとする提言をまとめ、公表した。
提言は、「食品残渣(さ)の飼料化、耕作放棄地、裏作、山間地などを有効活用して飼料生産を増加させ、家畜糞(ふん)尿の堆肥化やバイオマスとしての利用技術の開発を積極的に進め、持続可能な循環型農業を推進する必要がある」と食料、飼料の自給率向上による環境保全の重要性を強調している。
同時に消費ニーズ・シーズに応じた高品質の畜産物を生産することで農村地域の振興、さらには畜産物と動物生産を結びつける食育や大学の畜産学教育の改革も提言している。
提言をまとめた日本学術会議の生産農学委員会畜産学分科会(委員長・矢野秀雄家畜改良センター理事長)によると、日本の食糧自給率は先進国中最低水準で、穀物輸入の中で特に多い飼料用穀物の輸入は世界貿易全体の13%も占めている。
飼料の輸入依存は、穀物のバイオエネルギー化、経済発展国の飼料輸入の増大、異常気象による不作によって、将来も確保できるかどうかが心配されている。加えて、家畜飼養と作物生産を乖(かい)離させる結果、畜糞(ふん)の堆肥化という資源循環を妨げ、農村地域の衰退だけでなく、動物や水質など環境へ悪影響を与える窒素の過剰な蓄積を招く恐れがあることも指摘している。