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イノベーション政策にもイノベーションが?

掲載日:2009年4月27日

科学技術振興機構・研究開発戦略センターの5周年記念シンポジウム「イノベーション誘発のための研究開発戦略」が21日、開かれた。センターの提言したイノベーションの創出が2006年度からスタートした第3期科学技術基本計画の柱に採用されたことを主要な活動成果だ、とする報告がセンター自身からあった。この自己評価は大方に受け入れられるところかと思われるが、実行の方はどうか。「イノベーションという言葉が必ずしも共有化されず、あいまいに使われている」。イノベーション創出の提言を主導した生駒俊明 氏・前研究開発戦略センター長が、再三にわたって指摘していたのが目を引いた。

イノベーション政策が、既存の市場に新たな製品を生み出すことと同じような意味に解釈されるか、あいまいな定義のままはびこっている、というのが生駒 氏の不満のようだ。新しい製品を生み出して既存の市場のシェアをひっくり返す。こうした出口志向の研究開発、技術革新は、科学技術政策であって、イノベーション政策ではない。イノベーション政策とは、科学技術政策を内包するもの。研究者が論文を書いて喜ぶだけでなく、その先の新たなコンセプトを出すように科学技術政策を変え、それに加えて社会システムの変更や国民全体の意識の変更、あるいは市場構造の変更へと政策誘導していくのが本当の意味でのイノベーション政策、というのが生駒 氏の主張だ。

振り返ってみると、イノベーションの必要性を早くから主張し、イノベーション政策を先導してきた人たちは、当初から同じ主張をしていたことが分かる。

「イノベーションというとすぐ出口指向の研究と考え、基礎研究から応用研究へのシフトと考える人が多いが、これは間違いである。イノベーションとは単なる『技術革新』ではなく、もっと大きなインパクトを期待して言われるものである。すなわち『新しい価値の創造』を指していうと考えてほしい」(生駒俊明 氏=2007年8月15日オピニオン「産学連携とイノベーション」参照)

「基礎研究の成果、開発研究の成果、発明、技術革新などだけでは『イノベーション』とは言わない。このようなプロセスを起こしやすくする『場』(『エコシステム』と呼ばれる)の形成が国のイノベーション政策の根幹である」(黒川清 氏・内閣特別顧問「イノベーション25」中間とりまとめ「基本的考え方」=2007年3月1日レビュー「イノベーション25で変革を求められているのは」参照)

「日本の議論を聞いていると『イノベーション』については、欧米と比べ意識の点で出発点から大きくずれているのではないかと、最近思うようになった。…欧米の包括的なイノベーション政策に比べ、どうしても日本の政策は従来と同じような産業政策を踏襲しているようにみえる」(坂村健 氏・東京大学大学院教授、「イノベーション25戦略会議」委員)=「イノベーション25で変革を求められているのは」参照)

「イノベーション」とは、単なる「技術革新」という狭義の概念ではなく、広く社会のシステムや制度をも含めた「革新・刷新」である」(高市早苗 氏・内閣府特命担当大臣(イノベーション)=2007年2月1日オピニオン・「『イノベーション25』について」参照)

「イノベーション25」自体が、最近、さっぱり話題にならないが、イノベーションの創出の重要性は、第3期科学技術基本計画の柱であることに変わりはない。しかし、科学技術にかかわる産学官の指導者たちをパネリストに集めた今回のシンポジウム「イノベーション誘発のための研究開発戦略」でも、パネルディスカッションの参加者全員が「イノベーション」についての解釈で一致したようには見えなかった。

生駒 氏によると、イノベーションというのは、やはりシュンペーター(オーストリア出身の経済学者)が言い出したように「創造的破壊」を伴うものでなければならないという。イノベーション政策の旗振り役が想定したショベル系掘削機と、実行部隊が操作するショベルカーの規模、パワーにだいぶ差があるということだろうか。

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