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植物で組織ごとに違う体内時計を発見

掲載日:2014年10月30日

植物では組織ごとに異なる体内時計が働いていることを、京都大学大学院生命科学研究科の遠藤求(えんどう もとむ)助教らが見つけた。モデル植物のシロイヌナズナの時計遺伝子の発現を組織ごとで定量的に測定して実証した。特に、養分や水を運ぶ管が集まる維管束の時計遺伝子の働きを阻害するだけで、花の咲くタイミングを遅らせることができた。植物がどのように時間を測り、その情報を個体レベルで統合しているかを解明する突破口になる発見といえる。10月30日の英科学誌ネイチャーのオンライン版で発表した。

動物では、脳にある体内時計と、その他の臓器に存在する体内時計の機能が違うことが知られている。植物でも組織ごとに体内時計が存在する可能性は指摘されていたが、組織の単離に時間がかかるため、時々刻々と変わる時計遺伝子の発現を正確に解析するのが難しかった。研究グループはまず、超音波や酵素を使って、葉や茎での組織単離時間を従来の3分の1以下の30分以内に短縮し、遺伝子の発現量を追跡できるようにした。さらに、時計遺伝子の発現量を発光リズムで捉える独自の解析方法も開発して実験した。

シロイヌナズナに光を当て始めてからの葉全体と葉肉組織、維管束組織の時計遺伝子の発現を定量的に測定した。発現量や発現リズムなどが、葉全体と葉肉はよく似ていたが、維管束はそのどちらとも大きく異なっていた。さらに、維管束の時計の働きを阻害すると、葉肉の時計も阻害されたが、葉肉の時計を阻害しても、維管束の時計の働きに影響はないという非対称的な関係を実証した。維管束の時計は、フロリゲンと呼ばれる花成ホルモンの産生を通じて、花の成長を促しているも示した。

遠藤求さんは「われわれの研究で、植物の体内時計で維管束が非常に重要であることがわかった。また、植物の生理応答を組織ごとに解析する手法を開発したのも意義はある。維管束の時計機能を阻害するだけで花が咲くのを遅らせることができたので、維管束の時計は植物の成長調節法開発のターゲットになりうる」と指摘している。

シロイヌナズナの時計遺伝子の発現シグナル強度変化。24時間のうち16時間は光を当て8時間は暗くして解析。シグナル強度の平均を0として、高発現の遺伝子を青線で、低発現の遺伝子を緑線で塗り分けた。横軸は明期経過。葉全体と葉肉、維管束で全く異なる。
図. シロイヌナズナの時計遺伝子の発現シグナル強度変化。24時間のうち16時間は光を当て8時間は暗くして解析。シグナル強度の平均を0として、高発現の遺伝子を青線で、低発現の遺伝子を緑線で塗り分けた。横軸は明期経過。葉全体と葉肉、維管束で全く異なる。

シロイヌナズナの特定の組織で時計機能を阻害した系統。維管束の体内時計を阻害すると花が遅咲きになる。
写真. シロイヌナズナの特定の組織で時計機能を阻害した系統。維管束の体内時計を阻害すると花が遅咲きになる。
(いずれも提供:京都大学)
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