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特殊蛍光試薬で細胞内温度の計測に成功

掲載日:2012年2月29日

東京大学大学院や奈良先端科学技術大学院大学などの研究チームは、温度によって光り方が変わる特殊な蛍光プローブ(蛍光試薬)を開発し、生きた細胞内の温度分布を計測して画像化することに世界で初めて成功した。がんなどの病態細胞の新しい診断法や効果的な温熱療法の確立などに役立つとみられる。28日付の英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)」に発表した。

細胞温度は細胞の機能と密接に関係し、細胞の内部で起こるさまざまな化学反応の生命現象にも影響を及ぼしている。実際に、がん細胞などは正常細胞に比べ高温なことから、医学分野においても細胞温度の計測には関心が高い。しかし細胞のサイズは極めて小さいため、熱電対やサーモグラフィーなどの既存の計測技術は利用できなかった。

東京大学大学院薬学系研究科の内山聖一助教らは2009年に、温度変化によって構造が変わる高分子ゲルの内部に蛍光色素を結合させた蛍光プローブを作り、細胞1個の温度を計測する技術を開発した。「蛍光の強度」からその部位の温度が分かる仕組みだが、この蛍光プローブは細胞内部で互いに集まり固まってしまうため、細胞内部の小器官や、より小さな領域の温度や温度分布を測定することはできなかった。そこで今回、細胞内で凝集しづらい蛍光プローブを開発し、蛍光強度とは別の「蛍光の寿命」を利用する方法で、生きた細胞内部の温度分布を計測することを可能にした。

開発した蛍光プローブは、温度が高ければ蛍光寿命が長く、低ければ蛍光寿命も短いという性質をもつ。例えば、温度28℃では4.6ナノ秒(ナノは10億分の1)、40℃で7.6ナノ秒という「寿命」だ。これによりは0.18℃の温度差の検出が可能であり、実際に62個の動物細胞の温度分布画像を解析したところ、細胞核の温度は周囲の細胞質より平均0.96℃高く、細胞分裂に関係する中心体も平均0.75℃高かった。またミトコンドリアの近くで局所的に熱が発生していることなどが分かったという。

なおこの研究は、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業(先端計測分析技術・機器開発プログラム)要素技術タイプ「細胞内温度計測用プローブの開発」によって得られた。

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