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2025年「大阪・関西万博」が本格始動! 未来を共創する“巨大な文化祭” 【大阪・関西万博連携企画】

2021.05.28

堀川晃菜、本田隆行 / 知識流動システム研究所フェロー、科学コミュニケーター

2025年「大阪・関西万博」の会場イメージ(画像提供:2025年日本国際博覧会協会)
2025年「大阪・関西万博」の会場イメージ(画像提供:2025年日本国際博覧会協会)

 2005年の「愛・地球博」に続き、日本で20年ぶりとなる2025年に開催される国際博覧会「大阪・関西万博」。「いのち輝く未来社会のデザイン」という今回の万博のテーマを表現したロゴマークは公表されると即座に大きな話題を呼んだ。開催準備を進める2025年日本国際博覧会協会の広報戦略局戦略事業部係長(取材当時)の今村治世さんに注目ポイントを聞いた。

万博の町で「新たな万博」始まる

 大阪は万博の町だ。1970年、千里丘陵(大阪府吹田市)で開催された「日本万国博覧会」(大阪万博)は、半世紀たった今なお大阪の人々と共にある。

 1970年の大阪万博は、高度経済成長期の真っただ中にあった日本が、急成長する科学技術を誇り、世界に向けて存在感を放つ機会となった。「人類の進歩と調和」をテーマに掲げ、世界各国の新技術や文化を結集。リニアモーターカーや、電気自動車、携帯電話など、当時としてはまさに未来の科学技術が、約6500万人もの来訪者の目に焼き付いた。

 2025年の大阪・関西万博にも期待が膨らむ中、「今回の万博は、従来のイメージを大きく覆すものになると思います」と今村さんは語る。

 「以前、おじいさんやおばあさん達に大阪万博について伺った際、『万博、懐かしいなぁ。次も楽しみやわ。で? 今度はどんな“塔”を立てるんや?』と言われたことがありますが、今回の万博では何か1つだけのシンボルを提示するのではなく、皆で一緒に新しい万博をつくっていきたいと考えています」(今村さん、以下同)

2025年日本国際博覧会協会 今村さん(インタビュー取材は2021年3月に実施)
2025年日本国際博覧会協会 今村さん(インタビュー取材は2021年3月に実施)

 「いのち輝く未来社会をデザイン」する

 「万博」とは、博覧会国際事務局(以下、BIE)の承認を得て、国際博覧会条約という国際条約に基づいて行われる「国際博覧会」のことだ。BIEは1928年に発足し、本部はフランス・パリにある。加盟国は2021年5月現在で169カ国に達している。

 日本ではこれまでに、日本万国博覧会(1970年、大阪府)、沖縄国際海洋博覧会(1975年、沖縄県)、国際科学技術博覧会(1985年、茨城県)、国際花と緑の博覧会(1990年、大阪府)、2005年日本国際博覧会(2005年、愛知県)の5回が開催されてきた(表1参照)。

 国際博覧会には大きく「登録博覧会」(登録博)と「認定博覧会」(認定博)の2種類がある。以前は「一般博覧会」(一般博)と「特別博覧会」(特別博)の2種類だったが、1988年に国際博覧会条約が改定され、現在の区分となった。

 1970年の大阪万博は一般博として開催された。今度の大阪・関西万博は登録博だ。登録博は総合的で幅広いテーマが求められ、5年に1度、最大6カ月間にわたり開催される。一方、認定博は3カ月以内の会期で、5年ごとに開催される登録博の間に1度だけ開催される(ただし沖縄国際海洋博覧会や国際科学技術博覧会は半年間、開催された)。

表1. 過去に日本で開催された国際博覧会(万博)と、そのテーマ(博覧会資料から作成)
表1. 過去に日本で開催された国際博覧会(万博)と、そのテーマ(博覧会資料から作成)

 では、大阪・関西万博はどこが新しいのか。一番の特徴は、共創を目指すことにある。「以前の万博は、国威発揚や最新の科学技術を披露する場でした。新しい時代の万博は、共に創っていくことを大切にしています」と今村さんは語る。

 今回の万博では「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマの実現に向け、150の国と25の国際機関、そして企業や市民団体などが参加する。持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)の達成と、その先の未来を描き出すことが狙いだ(図1参照)。

 「SDGsの達成に貢献することは今回の万博の重要なミッションの1つです。そして、今回のテーマにある“いのち”も、人間の命だけを指しているのではありません。古くから日本には八百万の神という言葉があります。今回の万博が、ありとあらゆる生き物、それを育む地球までも含んだ、多様な“いのち”を考える機会になるのではないかと思います」

図1.大阪・関西万博の事業構成(2025年日本国際博覧会「基本計画」P.18を参考に作成)
図1.大阪・関西万博の事業構成(2025年日本国際博覧会「基本計画」P.18を参考に作成)

共創を象徴する「TEAM EXPO 2025」とは

 大阪・関西万博への具体的な参加方法としては、パビリオン出展や各界のトップランナー8人が手がけるテーマ事業への協賛などがある。なかでも、会期前から会期後までを通して行われる「TEAM EXPO 2025」プログラム(以下、TEAM EXPO)は、積極的に活動するグループなどを一般から募る参加型プログラムとして、従来の“万博は見に行くもの”という概念を大きく打ち破ろうとしている。

 TEAM EXPOへのエントリー方法は2つある。1つは「共創チャレンジ」。募集対象は、今回のテーマ実現に向け、主体的な行動を起こしている、または起こそうとしている個人・チームだ。まさに個々の力が求められている。

 もう1つは「共創パートナー」としてのエントリーで、多様な共創チャレンジの創出・支援を担う法人・団体を募集している。このプログラムに賛同し、自ら主体的かつ継続的にプログラムに合った独自の活動を展開することが求められる。

「TEAM EXPO 2025」プログラムについて語る今村さん
「TEAM EXPO 2025」プログラムについて語る今村さん

 従来は、舞台に立つ人と観客のように、どうしても関わり方に隔たりがあった。しかし「今度の万博は、皆さんが主役。一緒に万博そのものをつくっていきましょう」と呼び掛ける。

 「TEAM EXPOを通じて、他のメンバーと1つでも多くの身近な課題を解決し、ちょっと社会が良くなった! という体験を積み重ねてほしいです。SDGsという大きな課題の解決の糸口も、きっと地域や個人の一人ひとりの声の中にあると思います」

世界規模の「巨大な文化祭」

 TEAM EXPO の募集は2020年10月に開始され、2021年3月までの半年間で、すでにチャレンジの登録数は105件、パートナーには59の団体が名乗りを上げ、現在もその数は増えている。「地域性のあるもの、海外展開するものなど、企画内容もさまざまです。私たちが想像していた以上にたくさんのアイデアが集まってきていて、これからの展開にワクワクしています」と今村さんは声を弾ませる。

 例えば、追手門学院大手前中・高等学校のロボットサイエンス部は「大阪の若者が挑むSDGsを解決するためのロボット開発プロジェクト」をテーマに、SDGs達成に貢献するアイデアを提案している。

 大阪府立桜塚高等学校の軽音楽部は「オリジナル曲で万博を世界にアピール!」をテーマに参加。オリジナルの万博応援歌を作詞・作曲し、さらに英語の翻訳版も用意してYouTubeを通じて世界に発信している。これも協会から依頼したわけではなく、学生たちによる自発的な活動だ。

 共創パートナーが、個々の共創チャレンジを有機的に結び付けていくなど、協会側の予想を超えた相乗効果も生まれている。一団体の取り組みとして終わるのではなく、他のチャレンジやパートナーも巻き込み、より大きく発展していく。まさに、共創をテーマとした「一緒につくっていく万博」だ。

 さらに2025年の万博会場では、リアルとバーチャル(オンライン)の両方でTEAM EXPO の参加者に発信の場が用意される予定だ(図2参照)。会期前からの活動成果を共有し、新たなコラボレーションや、時間と空間を超える共創が生まれることが期待されている。

図2.共創と参画を促す「TEAM EXPO 2025」プログラム(2025年日本国際博覧会協会HPを参考に作成、画像提供:2025年日本国際博覧会協会)
図2.共創と参画を促す「TEAM EXPO 2025」プログラム(2025年日本国際博覧会協会HPを参考に作成、画像提供:2025年日本国際博覧会協会)

 「TEAM EXPOによって、万博の会期や会場の制約はなくなりました。2025年の万博は、もう始まっていて、2025年で区切る必要もありません。TEAM EXPOの活動を万博が終わった後もレガシーとして残していけるように、さらに活動の輪を広げ、世界中の人々に参加を呼びかけていきたいですね。そういう意味では、万博は“巨大な文化祭”と言えるかもしれません」

一人ひとりが新時代を切り開く

 一人ひとりが主人公で、いのちを表現する。万博はそれを包含し、受け入れる場になろうとしている。今村さんがそのことを強く実感したのは、2020年8月に発表されたロゴマークの策定プロジェクトを担当した時だ。

大阪・関西万博のロゴマークを背に
大阪・関西万博のロゴマークを背に

 このロゴマーク、あなたには何を連想させるだろうか。ネット上では、ガラナという植物やドーナッツなど皆がロゴマークに似た“何か”を探し、大喜利のような盛り上がりをみせた。

 「このロゴマークの大きな反響には驚きました。そして、このように皆が楽しんで自分から参加することが、皆でつくる万博につながっていくと思ったのです。TEAM EXPOには一定の要件を満たしていれば、自分が取り組みたいと考えるさまざまなテーマにおいて、いろいろな形での参加が可能です。ぜひ、今からでも共創チャレンジ・共創パートナーへの登録をご検討いただけたらと思います」

 特に若い世代には、自分の好きなこと、やりたいことを万博の場を使って発信してもらいたいと今村さんは語る。

 「何かやってみたいけれど、どう取り組めばよいか分からないという方もいらっしゃると思います。共創パートナーにはそうした思いやアイデアを応援する団体もあります。特に学生の皆さんにはTEAM EXPOを活用してほしいですね。大阪・関西万博をぜひ一緒に盛り上げていきましょう!」

 参加型を前面に打ち出し、早くも活動の輪に広がりを見せている大阪・関西万博。日本から世界へ、一人ひとりのみなぎる力で新時代を切り開く、大きな一歩が刻まれようとしている。

今村 治世(いまむら・はるとし)

今村 治世(いまむら・はるとし)
前2025年日本国際博覧会協会 広報戦略局戦略事業部戦略事業課 係長
2009年、京都大学大学院工学研究科都市環境工学専攻修了。民間企業や地方自治体での勤務経験を経て、2019年4月から約2年間、大阪・関西万博の企画および広報戦略業務に従事。TEAM EXPO 2025プログラムやロゴマーク策定のプロジェクトを担当した。

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