映像の制作を通して、こどもたちの科学への関心を喚起するため、全国の小中学生から、科学をテーマにした映像(10分以内)を募集して、優秀な作品を顕彰する第13回全国こども科学映像祭の表彰式が12月14日、東京都千代田区の北の丸公園にある科学技術館実験スタジアムで開かれた。全国から受賞した児童・生徒や父兄、教諭ら約100人が出席し、優れた科学映像を作ったこどもたちに拍手を送っていた。
「身近ななぜ? ふしぎ? 発見! をテーマにビデオ作品をつくってみよう!」と全国の小中学生に募集を呼びかけ、今年は小学生65点、中学生47点が集まった。主催は、日本視聴覚教育協会、つくば科学万博記念財団、科学技術振興機構、ニューテクノロジー振興財団で、文部科学省などが後援している。科学に関心を持つ小中学生らに浸透し、応募が計100点を超えたのは初めてで、内容も充実して、こどもらしい感性が豊かな作品が多かった。
文部科学大臣賞(最優秀作品賞)は小学生部門が「アリジゴクの変身と巣のひみつ」を実験と監察で丹念に調べた長野市立長沼小学校4年の中沢藍(なかざわ あい)さんと父の英明(ひであき)さんに、中学生部門は、先輩たちが積み重ねた「壁をよじ登る動物」の研究を基に「ヒトは壁を登れるか」の実験に挑んで見事に成功した東京都八丈町立三原中学校サイエンス部壁登り班の沖山颯斗(おきやま はやと)さんら3人と部活顧問の川畑喜照(かわばた よしてる)教諭に表彰状と盾、副賞のデジタル顕微鏡が贈られた。
また、特別賞は、20年間脈々と西表島のチョウの長期観察を続けてきた沖縄県竹富町立古見(こみ)小学校の全学年と、地域で科学映像教育に取り組んできた愛知県岡崎市教育委員会に授与された。古見小学校は日本列島の西南端に近い西表島にある児童数14人の小さな小学校で、6人のこどもたちがはるばる船や航空機を乗り継いで上京し、表彰式の壇上に誇らしげに立った。また、八丈島の三原中学校の文部科学大臣賞は昨年に続く連続受賞で、自然豊かな離島のこどもたちの活躍が目立った。
表彰式では、主催団体を代表して科学技術振興機構の渡辺美代子(わたなべ みよこ)執行役が「全国からたくさんの応募をいただき、内容も多様で、質が高かった」とあいさつし、来賓の文部科学省の村田善則(むらた よしのり)科学技術・学術総括官は「さまざまな現象に疑問を持ち、探求した成果」とたたえた。審査委員長の池本卯典(いけもと しげのり)日本獣医生命科学大学学長は受賞作の多彩な実験や映像の革新性も評価して「やがて皆さんの情熱が広がり、世界のこども科学映像祭になることを願っている」と語った。
文部科学大臣賞を受けた2作品が上映された後、NHKエンタープライズの前エグゼクティブプロデューサーの大井徳三(おおい とくぞう)さんが「映像の論理とハ・ゲ・グ」と題してゲスト講演し「皆さんの作品が優れているのに、とてもびっくりした」と語り始め、「映像は表現の一種で、まずハッとさせ、次にゲッとさせ、最後にグッとさせる、シークエンスのメリハリが必要だ」と助言した。最後に、受賞者が壇上に並んで記念撮影して、表彰式を終えた。