レビュー

世界各地で熱波や大雨、干ばつなどの「極端な気象現象」 温暖化が影響と国際機関や専門家

2022.09.12

内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員

 今年、日本列島は6月から記録的な高温が続く熱波に見舞われた。7月に入ると西日本を中心に、8月には東北北部でそれぞれ記録的な大雨が降った。日本だけはでない。米国やカナダは昨年に続いて今夏も危険な暑さが続いた。欧州でも英国やポルトガルなど多くの国で異常な高温が続いた。パキスタンでは国土の3分の1が水没する大洪水に襲われた。一方、中国は歴史的な干ばつ被害を出している。

 地球の温暖化は二酸化炭素やメタンなど温室効果ガスの増加により地表面が上昇することだが、こうした現象は地球全体のさまざまな気象パターンを変えるために気候変動という言葉も多用されている。

 この夏、日本では異常気象、海外では主に「極端な気象現象」(極端気象)と呼ばれ、人間生活や生態系に甚大な被害をもたらす気象が世界的に頻発した。その原因について国内外の多くの専門家は「偏西風の大きな蛇行」を挙げている。そして国連・気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や世界気象機関(WMO)などの国際機関、日本の気象庁のほか、多くの専門家は温暖化が世界的に頻発している極端気象に大きく影響している、と指摘している。

世界気象機関(WMO)が今年5月に公表した2021年の極端な気象現象の要因などを分析した報告書の表紙(WMO提供)
世界気象機関(WMO)が今年5月に公表した2021年の極端な気象現象の要因などを分析した報告書の表紙(WMO提供)

日本の今夏は「記録的な暑さ」

 気象庁によると、6月下旬から7月初めにかけて全国24の観測地点で観測史上の最高気温を更新した。例えば、群馬県伊勢崎市ではセ氏40度以上の最高気温を3日間観測し、東京都では最高気温が35度以上の猛暑日が9日連続した。また7月12日に埼玉県鳩山町で6時間の雨量が360ミリ、8月4日に新潟県関川村で24時間の雨量が560ミリというそれぞれ観測地点で史上最多を記録した。

 気象庁は9月1日、今年6~8月の日本平均気温は統計を開始した1898年以降、2010年に次いで2番目に高かった、と発表。また日本近海の平均海面水温も統計を開始した1982年以降、2001年、16年と並んで1番高かったという。

 全国153観測地点から算出した地域別の平年差でも、この夏は東日本と西日本でかなり高く、北日本でも高くなった。特に西日本は平年差がプラス0.9度。この平年差の数値は1946年の統計開始以来、2013年、18年と並んで最も高い数値だった。つまり今年の夏、日本は「記録的に暑かった」のだ。

 こうした高温の要因について気象庁は、日本の南海上の太平洋高気圧の東日本以西への張り出しが強かったため、暖かい空気に覆われやすくなったと指摘。北日本でも寒気の影響をほとんど受けずに南海上の強い太平洋高気圧から暖かい空気が流れ込みやすい状況だったと説明している。

 このように太平洋高気圧が強かったのはなぜか。気象庁はインドネシア付近で積雲対流活動が活発だったことや、昨年秋から続いていたラニーニャ現象により、北半球全体で偏西風が平年より北に移動し、太平洋高気圧が北に張り出しやすくなったことを挙げた。

 ラニーニャ現象は南米ペルー沖の海面水温が低くなる現象で、相対的に西太平洋の海面水温は高くなる。このため北半球の気象にさまざまな影響を与え、日本付近の夏は太平洋高気圧が北に張り出しやすくなり、気温が高くなる傾向がある。温暖化による平均気温の上昇はこの現象による影響を結果的に強めている可能性があると指摘する専門家もいる。

 日本の夏の平均気温偏差(左)と夏の平均気温の高さ順位(右)(気象庁提供)
日本の夏の平均気温偏差(左)と夏の平均気温の高さ順位(右)(気象庁提供)

熱波や大雨は「偏西風の蛇行」が影響と検討会

 1日の気象庁の発表で注目されたのは、毎年の個々の気象現象と温暖化との関係についてかなり慎重な表現を使ってきた気象庁が、今夏の高温について「温室効果ガスの増加に伴う温暖化により、大気全体の平均気温も上昇していることも要因の一つ」と明示したことだ。

 気象庁の「異常気象分析検討会」(中村尚会長)は8月22日、 日本各地に記録的な高温と大雨をもたらした気象現象についての分析結果を発表している。偏西風の南北の大きな蛇行が要因で、温暖化に伴う気温の上昇や水蒸気の増加傾向も影響したとの見方を示した。検討会の中村会長は記者会見で「異常な状態、極端な状態と言って差し支えない」と述べている。

 検討会は、6月下旬から7月初めの記録的な高温は、日本付近の上層を西から東に流れる偏西風の「亜熱帯ジェット気流」が北に蛇行し、上層の高気圧と地表近くの太平洋高気圧がともに記録的に強まり、これに持続的な温暖化傾向が加わった、と分析した。さらに7月の各地の大雨は、日本の北方で高気圧が停滞し、亜熱帯ジェット気流が日本付近で南に蛇行。上層の寒気の影響を受けやすかったことが要因だったと分析した。

 また、7月末から8月中旬にかけてはこのジェット気流が北上し、北日本付近に前線が停滞して大雨をもたらした一方、西日本を中心に高温が続いたという。検討会は今夏の熱波は「地球温暖化による全球的な気温上昇」が、また大雨についても「温暖化の進行に伴う大気中の水蒸気の長期的な増加」が影響しているとの見方を示している。

 このように気象に大きな影響を与える偏西風の南北の大きな蛇行がどのようなメカニズムで起こるのか。地表や大気の温度のほか、「ロスビー波」と呼ばれる大規模波動のエネルギーが関係する実に複雑なメカニズムによる。

 「北極圏の温暖化」が影響していると指摘する論文が2018年8月に英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。以降この説が注目されている。この説を簡略化するとこうだ。

 「北極圏が他の地域より顕著に温暖化が進行し、北極圏と赤道付近の温度差が小さくなる。すると気圧の差も減り、北極圏と赤道側の間を通る偏西風は流れが弱く、遅くなり、蛇行を大きくする」。

 東京大学先端科学技術センター教授を務める気象庁検討会の中村会長は「40年前に今夏と同じような大気の流れがあってもこれほどの暑さにはならなかっただろう」などと述べ、温暖化や気候変動がもたらした影響の大きさを指摘。今後もこうした極端気象が起きることを想定した「備え」の重要性を強調している。

6月下旬から7月初めに記録的な高温をもたらした大規模な大気の流れの模式図(気象庁提供)
6月下旬から7月初めに記録的な高温をもたらした大規模な大気の流れの模式図(気象庁提供)
8月に東北北部を中心に大雨をもたらした大規模な大気の流れの模式図(気象庁提供)
8月に東北北部を中心に大雨をもたらした大規模な大気の流れの模式図(気象庁提供)

北米や欧州も猛烈熱波で甚大被害

 この夏、記録的な高温が続く猛烈な熱波や人的被害は北米や欧州からも伝えられた。共同通信や米CNN、英BCCなどの海外メディアは7~8月、連日のように欧米各地で記録的な高温が観測されたことを伝えた。

 これらの報道によると、米国は東部や南部を中心に7月、40度前後の危険な暑さになった。米気象当局は人口約3億3000万人のうち1億人以上が注意報や警報下にあるとして警戒を呼び掛けた。米国やカナダの猛暑はここ数年起きていた気象現象だったが、今夏は多くの地点で最高気温を更新した。テキサス州では冷房用の電力需要が急増し、節電要請が出たという。

 欧州の熱波も凄まじかった。英国では7月、ロンドンをはじめ、複数の地点で観測史上初の40度超を記録した。英気象庁などによると、同国の最高気温は2019年にケンブリッジで観測された38.7度だったが、今年は各地でこの数値を上回った。また高温の影響で原野などから出火し、住宅などにも延焼した。

 ポルトガルも熱波に襲われ、7月14日に47度を記録。同月19日には高温に起因するとみられる死者が1063人に達したと伝えられた。フランス・パリでは観測史上3度目の40度超えを記録。ドイツやオランダでも40度近くを観測した。

 欧州各国のメディアも「熱波の原因は偏西風の蛇行」と伝えた。偏西風の蛇行により、欧州が長い期間高気圧に覆われて日射量が増えているという。そして「同じような気圧配置は以前にもあったが、高温記録が更新されている背景に温暖化の影響がある」と指摘する専門家のコメントを伝えている。

壊滅的洪水でパキスタン国土の3分の1が水没

 このような極端気象は今春以降、日本以外のアジア各国でも起きていた。WMOによると、インドでは3月の平均最高気温記録を更新し、5月には45~50度を記録。パキスタンでも50度前後を記録し、その後同国からは「山岳地帯で氷河湖が決壊して洪水が起きた」と伝えられた。

 パキスタンの大雨や氷河湖決壊による洪水被害は7~8月に甚大化した。WMOが8月30日に出したプレスリリースによると、人口約2億2000万人の同国の約3300万人が大雨や洪水、土砂崩れといった被害を受け、住宅や農地が浸水。7月の平均降水量は過去30年平年の約3倍を記録した。パキスタン政府は国内72地域を災害被害宣言の対象に指定した。確認できただけでも約1100人が死亡、水牛、牛、羊などの家畜も70万頭以上が死んだという。

 ロイター通信は9月3日の段階で死者は約1300人に増え、被害総額は約100億ドル(約1兆4000億円)に上ると伝え、海外メディアはそろって「国土の3分の1が浸水した」と伝えた。国連のグテーレス事務総長はビデオメッセージで「パキスタンの人々はここ数十年で最悪の大雨と洪水被害に直面している。(援助の)ニーズが増し、世界がこのことを注視する必要がある」などと述べ、国際社会による支援を訴えている。

パキスタンの洪水被害で途方に暮れる子どもの様子を伝えるWMOの画像(WMO提供)
パキスタンの洪水被害で途方に暮れる子どもの様子を伝えるWMOの画像(WMO提供)

 米航空宇宙局(NASA)は9月1日、パキスタンの壊滅的な洪水被害を捉えた衛星画像を公開した。NASAによると、今年の同国の降水量は過去30年平均の5~6倍に達し、洪水はパンジャブ州、カイバル州、シンド州などを流れるインダス川沿いで発生。100万戸以上の家屋が破壊されたり大きく損傷したりしたとした。

 公開された衛星画像では洪水被害拡大前の8月4日と拡大後の28日の画像を比較できる。28日の画像は深い青色部分が示す洪水部分が拡大していることを示している。NASAは「インダス川流域の南部は大洪水によって平野が海に変った」と指摘した。また洪水の原因として「極端なモンスーンによる降雨」のほか、約7000を数える氷河が溶けたことを挙げ、ヒマヤラ山脈の氷河の崩壊や溶解は温暖化によりもたらされたとの見方を示している。

パキスタン南部の洪水被害が拡大する前の8月4日 (左半分、南部西方)と後の同月22日(右半分、南部東方)の衛星画像。22日はインダス川(右半分の左上部分)が氾濫し深い青色が示す洪水部分が拡大していることが分かる(NASA提供)
パキスタン南部の洪水被害が拡大する前の8月4日 (左半分、南部西方)と後の同月28日(右半分、南部東方)の衛星画像。28日はインダス川(右半分の左上部分)が氾濫し深い青色が示す洪水部分が拡大していることが分かる(NASA提供)
パキスタン南部シンド州シカルプルの洪水被害拡大前の8月4日(左)と後の同月22日(右)の衛星画像。22日には深い青色部分が増えて洪水が拡大しているのが分かる(NASA提供)
パキスタン南部シンド州シカルプルの洪水被害拡大前の8月4日(左)と後の同月28日(右)の衛星画像。28日には深い青色部分が増えて洪水が拡大しているのが分かる(NASA提供)

 温暖化の影響が指摘される氷河の崩壊はインドで昨年2月に、イタリアでは今年7月に氷河の一部が崩壊して雪崩が発生し死者を出したと伝えられている。

 こうした大雨や洪水などの被害が伝えられた一方、中国では甚大な干ばつ被害が伝えられた。共同通信北京支局によると、中国当局は8月30日、長江流域を中心とした7月以降の記録的な熱波や干ばつの被災者は3785万人に達し、経済損失は315億元(約6300億円 )に上ることを明らかにした。農業用水や飲料水の確保が困難になる地域が相次ぎ、水力発電量が低下した、四川省では計画停電のために多くの工場が一時操業停止したという。

今後も続く「極端気象」

 この夏頻発した記録的高温や大雨などが頻発すると日本ではまだ「異常気象」という表現がよく使われる。気象庁は異常気象とは「30年に1回以下のまれな現象」としてきたが、毎年のように高温や大雨の記録が更新されるようになり、異常気象という呼び方も見直されつつある。海外ではだいぶ前から「extreme weather (events)」「weather extremes」が頻繁に使われている。IPCCやWMOなどの報告書でも多用され、日本国内でも今後「極端な気象現象」「極端気象」という言葉が一般的になるだろう。

 近年は地球のどこかで熱波が襲い、干ばつ状態が続く一方、別の地域では極端な大雨、豪雨による洪水被害が出る。地球温暖化は平均気温が長期的に上昇する現象で海水温も上昇し、さまざまな気象に影響を及ぼす。世界のどの地域も気温が上がるわけではなく、極端な寒波に見舞われる地域もある。近年世界的に頻発している記録的な高温、熱波や大雨、干ばつなどは極端気象と呼んだ方が地上で実際に起きている状況をイメージしやすい。

 熱波は山火事を増加させる。WMOは9月7日に「気候による変動が影響した熱波による山火事が今後も増加し、大気が汚染されることで数億人の人体に影響を及ぼす」などとする報告書を公表した。今夏熱波が襲ったポルトガルやフランスなど欧州各国でも大規模な山火事が発生している。

熱波による増加している山火事の人体への影響などを指摘したWMOの報告書に関するプレスリリースに掲載された山火事の写真(場所、日時は不明)(WMO提供)
熱波による増加している山火事の人体への影響などを指摘したWMOの報告書に関するプレスリリースに掲載された山火事の写真(場所、日時は不明)(WMO提供)

 WMOのターラス事務局長は7月に「英国で過去最高気温が記録された。気候変動により熱波が頻発する。この関係はIPCCの作業によって明確に実証された」と明言した。そして「今後熱波は常態化し、より極端な気象現象に遭遇するだろう」と述べた。

 ターラス事務局長が触れたIPCCの作業とは昨年8月に公表された「第6次評価報告書」第1作業部会の「自然科学的根拠」報告書や、今年2月に公表された同第2作業部会の「影響・適応・脆弱性」報告書を指している。同報告書は気温上昇に伴う深刻な影響を示す詳細な分析データを示しながら「人間の影響が大気、海洋、陸域を温暖化させたことは疑う余地がない」と断じ、国際社会が覚悟をもって大胆な温暖化対策を急ぐことを求めた。

IPCCが昨年8月に公表した「自然科学的根拠」報告書概要版の表紙(上)と今年2月に公表した「影響・適応・脆弱性」報告書概要版の表紙(IPCC提供)
IPCCが昨年8月に公表した「自然科学的根拠」報告書概要版の表紙(上)と今年2月に公表した「影響・適応・脆弱性」報告書概要版の表紙(IPCC提供)

 昨年8月の第1作業部会報告書は地球の平均気温の上昇に伴う危機的な状況を予測。産業革命前と比べて既に「1.09度」上っているとした上で「50年に一度の(凄まじい)熱波」という基準を使用。今後1度上昇すると「50年に一度の熱波」の頻度は産業革命前の13.9倍増えるとした。日本はじめ各国の今年の熱波を思うにつけ怖くなる数値だ。

 今年2月の「影響・適応・脆弱性」報告書では、世界人口の4割以上の約33~36億人が極端気象などの気候変動に対応できずに既に被害を受けやすい状況にあるなどと指摘。この夏のパキンスタンや欧州ポルトガルでの惨状を直前予知したような内容だった。

「アトリビューション分析」で温暖化影響を明らかに

 大雨や高温といった大気が複雑に絡む気象現象が地球の平均気温の上昇傾向、つまり温暖化と関係するのではないか、という見方はIPCCが生まれた1988年ごろから出されていた。しかし気象現象は実に複雑で、温暖化との関係を立証する説得力のあるデータは長く示されなかった。

 しかしその後、スーパーコンピューター(スパコン)が登場。さまざまな気象現象に関係する解析や予測が可能になった。「イベント・アトリビューション分析」と呼ばれる手法で、例えば地球温暖化、つまり大気や海水の温度上昇がある場合とない場合を比較してさまざまな気象イベント(気象現象)の発生確率がどの程度増えるかを解析、予測できるようになった。

 現在世界の約200の国と地域が参加し、各国の著名な研究者が最新のデータを持ち寄るIPCCも長く地球温暖化と気候変動の直接の関係については慎重な見方を示していた。しかし、このアトリビューション分析を駆使した作業の集大成として昨年8月の第1作業部会報告書をまとめた。そして膨大なデータを示しながら近年頻発する極端気象や顕在化した「気候危機」は人間の行為によるものと明確に結論付けている。

 日本をはじめ各国には温暖化によるさまざまな影響を否定する「温暖化懐疑論者」がいたが、IPCC報告書などに根拠をもって反論できていない。

 アトリビューション分析では温暖化と高温が続く熱波は比較的簡単に検証できるが、大雨との関係は難しいとされていた。気象庁関係者によると、温暖化が記録的大雨との関係を国内で初めて検証、相互の関係を一定程度明らかにできたのは2017年の九州北部豪雨だという。

 日本での分析もスパコンなしに不可能だったと言われる。日本は地球の中では小さな島国で地形も複雑で、例えば大雨も細かい地域単位で降る。このため精度の高い気候モデルを使ってのシミュレーションはスパコンの活用なしには不可能だった。

 IPCCやWMOなどの国際機関や関係学会、国内外の気象の専門家は近年、世界的に頻発している極端気象は温暖化がもたらしている可能性が高いとの見方でほぼ一致している。米気象学会は約10年前から極端気象の事例と温暖化との関係をアトリビューション分析した報告書を毎年作成している。この夏の分析はまだ公表されていないが、いずれ明快な報告書がまとめられるだろう。

危機感共有して対策急ぐ必要

 この夏、世界の多くの国の多くの人々が極端気象をもたらす温暖化や気候変動に対して強い危機感を抱いたはずだ。その一方で、やはり地球上で起きたロシアによるウクライナに対する軍事侵攻は世界のエネルギー需給に深刻な影響を与えた。天然ガスをロシアに依存してきた欧州諸国に一部には石炭火力回帰の動きが見られる。

 国際社会の気候変動対策の強化は「待ったなし」のはずだ。だが、11月にエジプトで開かれ、対策強化の具体策を議論する国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は、すでに事前のいくつかの協議で先進国と途上国の利害が対立しており、先行きは予断を許さない。

 多くの国際機関や専門家が警告するようにこの先も極端気象は続き、影響や被害も一層深刻になる可能性が高い。被害を完全に防ぐことはほぼ困難だ。だが、少しでも軽減し、気候変動に「適応」できるレベルまで温室効果ガス排出を抑えるためには、国際社会が危機感を共有し、何としても気候変動対策の強化につなげる必要がある。

昨年10月31日から11月13日まで英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約(UNFCC)の第26回締約国会議(COP26)の開幕セッションの様子(UNFCC事務局提供)
昨年10月31日から11月13日まで英国・グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約(UNFCC)の第26回締約国会議(COP26)の開幕セッションの様子(UNFCC事務局提供)

関連記事

ページトップへ