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外部研究資金と大学内部資金の適正な比率は?

2010.11.08

 年々、削減されてきた運営費交付金などの大学内部資金が多くの研究プロジェクトを支えていることが、科学技術政策研究所と一橋大学イノベーション研究センターの調査「科学における知識生産プロセスの研究 - 日本の研究者を対象とした大規模調査からの基礎的発見事実」で浮き彫りになった。

 競争的研究資金をはじめとする外部資金と大学内部資金の適正な比率を議論する上で、貴重なデータになりそうだ。

 この調査報告書は、2001-06 年に発表された論文のうちで日本が関与しているものから、被引用数が上位1%(トップ1%論文)とそれ以外の論文(通常論文)を抽出し、論文を生み出したそれぞれの研究プロジェクトを比較しているのが特徴だ。

 トップ1%論文の88%、通常論文の77%が科学研究費補助金や科学技術振興機構からの研究資金など外部資金を得て実施された研究プロジェクトとなっている。外部資金なしに日本の研究は成り立たないことをあらためてはっきり示しているといえる。

 問題は、これらの論文が外部資金だけに支えられているわけではないことだ。外部資金のみで実施された研究は、トップ1%論文の25%、通常論文の15%だけで、残りは内部資金と外部資金の両方を利用している。また内部資金だけで研究が行われたトップ1%論文が12%、通常論文で23%ある。結局、内部資金が使われている論文は、トップ1%論文で75%、通常論文で85%に上る。

 国立大学が法人化した2004年度から運営費交付金は毎年1%ずつ削減されてきている。86の国立大学法人と4つの大学共同利用機関法人合わせて90法人に対する国の予算、運営費交付金は年間約1兆2,000億円。「山形大学の毎年の運営費交付金が120億円だから、毎年山形大学の規模のものが1つずつ消滅してきた計算になる」(結城章夫 氏・山形大学 学長、2010年2月3日ハイライト「地域に根差し世界を目指す-地方中規模総合大学の未来」参照)

 東京大学を例にとると5年間の削減額は約50億円。「50億円というのは、お茶の水女子大学一つの年間運営費に相当する。工学部の各学科も外部資金を取らないと生きていけないので、外部資金目当ての非常にファッショナブルな分野を並べる」(前田正史・東京大学理事・副学長、2009年11月9日インタビュー「イノベーションの議論を超えて」第4回「崩れつつある大学の足元」参照)。

 競争的研究資金などの外部資金には芽を出したばかりの研究が一挙に花開く、といった大きな成果が期待でき、実際に多くの実例がある一方、研究者が目先の成果、受けを狙った研究テーマを選ぶようになる危うさもある、ということだろう。

 大学内部資金の削減は学部学生の教育にも大きな影響を与えるという声も聞かれる。競争的資金など外部資金と運営費交付金など大学内部資金との適正な比率はどのくらいか。普通の国民が判断できるような調査結果はないものだろうか。

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