国立大学法人の運営費交付金、私立大学の経常費補助金など、いわゆる経常的資金は年々減っている。少子化の影響で学生全体の数が減っているため、入学金や授業料収入の大幅な増加も難しい。
財政状況が悪くなっているのだから、国立大学法人も、それなりの影響を受けるのは仕方ない。しかし、将来、運営費交付金がどうなるのかはっきりしないので中期計画やさらにもっと長いスパンの計画が立てられない、といった声も国立大学の学長から聞かれる。
では、こうした逆境に立ち向かう国立大学の有効な手立ては、あるのだろうか。方策の一つとしてまず、迫られるのは外部資金を増やす算段のようだ。科学研究費補助金をはじめとする競争的資金は毎年増え続けており、こうした競争的資金の獲得が大学の生き残る道の一つとなっている。例えば過去に何度も科学研究費補助金を獲得した経験のある教員が講師を務める勉強会を開いたり、申請書の学内チェックを行うなど、さまざまな取り組みに力を入れている大学がある。これまで外部資金などに縁がなかったような研究者にも頑張ってもらおうという狙いである。そうした努力をしている大学とそうでない大学とでは、自ずと違いが出てくるのは当然だが、大学の規模や性格上、外部資金を得やすい大学と、従来通り運営費交付金に相当程度頼らざるを得ない状況にある大学との分極化は避けられそうもない。
科学技術政策研究所はこのほど、そうした大学の努力を、定量的に評価した初めての報告書「国立大学法人の財務分析」を公表した。基盤的資金、競争的資金の実態を中心に国立大学法人の財務に関する基礎データを整理、分析して、将来像を考える検討材料に供するのが狙いだ。
報告書では、87ある国立大学法人の財務諸表、業務報告書から、運営費交付金収益、施設費収益、自己収入(授業料、入学金、病院収入など)、外部資金関係収入(寄付金、受託研究・事業収益、補助金など)といった“収入”と、業務費(教育・研究・診療経費など)、人件費、一般管理費、財務費用などの“支出”を抽出し、大学の役割である「教育」、「研究」、「社会貢献」の面でそれぞれどのような収入と支出があったかを分析している。
その中に、基盤的資金(運営費交付金、施設整備補助金)に対する外部資金(外部資金、科学研究費補助金)の比率を算出している個所がある。旧帝国大学などの大規模大学や、理工系中心大学では、競争的資金の拡充とあいまって、外部資金の比率が高い。13の大学が40%を超えている。18年度決算でいえば、トップは東京大学(70%)、次いで東京工業大学(63%)、東京農工大学(61%)、京都大学(60%)、大阪大学(59%)、東北大学(55%)、奈良先端大学院大学(52%)と続く。一方で、教育大学や文科系が中心の大学では外部資金比率は低い。
調査結果を詳しく伝えた2月1日の科学新聞は、「外部資金割合が20%未満の場合は、何らかの機能に特化していかなければ、経営は厳しくなりそうだ」という科学技術政策研究所研究員のコメントを載せている。今回の調査で、外部資金収入の比率が20%に満たないとされている大学の数は48と全体の55%に上った。
「教育」「研究」「社会貢献」のいずれを重視した経営を行っていくのか。今後、厳しい選択をこれらの大学は迫られる、ということだろうか。