来年10月、名古屋での国連生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)開催を控え、日本企業の生物多様性に対する関心の低さを示す調査結果が、環境省から公表された。
「環境にやさしい企業行動調査結果」で、毎年、環境省が実施している。今年は7月から8月にかけて1部、2部上場企業と従業員500人以上の非上場企業計6,830社を対象(回収率44.3%)に行われた。
調査項目の一つである生物多様性保全の取り組みについて「企業活動と大いに関係あり、重要視している」という企業は13.4%だった。昨年の調査に比べ0.4ポイント上昇しているとはいえ、他の調査項目と比較すると関心の低さが目立つ。例えば「環境ビジネス」については42.1%の企業が「既に事業を展開、またはサービスなどの提供を行っている」と答え、「今後予定がある」「今後取り組みたい」という企業を合わせると6割以上が環境ビジネスを前向きにとらえている。
地球温暖化防止対策についても「方針を定め、取り組みを行っている」(57.4%)、「方針を定めてはいないが、取り組みを行っている」(31.3%)を合わせ、9割近くの企業が何らかの取り組みをしていると答えている。この問いに対応する生物多様性に関する質問の答えは「方針を定め、取り組みを行っている」が5.0%にとどまり、「方針を定めてはいないが、取り組みを行っている」(13.5%)を合わせても18.5%でしかない。方針も取り組みもないという企業が実に8割近くに上っているのだ。
そもそもニュースとして伝えられる頻度に著しい差があるから、生物多様性に対する知名度、関心が薄いのはやむを得ないこと、とも思われるが、調査報告からもう一つの理由を見つけることができる。
「方針を定め、取り組みを行っているか」を問う設問は、地球温暖化も生物多様性も確かに同じだ。しかし、地球温暖化対策については、その設問の直後に「『地球温暖化対策の推進に関する法律』では、事業者や国民は環境負荷の低減に向けた行動をまず、自主的かつ積極的に進めるべきものとされており、事業者はその事業活動に対し、温室効果ガスの排出の抑制等のための措置に関する計画を策定し、公表するように努めなければならないと規定されている。この規定に対して、貴組織ではどのような対応をされているか」という関係法律に触れた長い質問項目が続く。しかし、生物多様性ではその質問に対応するものがない。
「地球温暖化対策の推進に関する法律」は1998年にできている。「生物多様性基本法」が施行されたのは昨年6月だ。この時間差が、生物多様性に対する企業の関心の薄さと取り組みの遅れの大きな理由、と考えると合点がいくのではないだろうか。