レビュー

出生率は上がっているか

2009.06.04

 合計特殊出生率上昇の話が3日各紙朝刊に大きく報道されている。「3年連続上昇」という見出しが目立った。好ましいニュースという印象を抱いた読者が大半だったと思われる。

 女性が子供を産むかどうかの問題が一筋縄でいかないことは、例えば小川眞里子・三重大学教授の話などからもよく分かる(2008年2月1日ハイライト「科学史が明らかにする『産む性』のいかがわしさ」。昔から特に成熟した国家が人口を維持するには、さまざまな啓蒙策や支援策を講じないと難しいという実態があったようだ。

 厚生労働省の発表によると、08年の合計特殊出生率は1.37で前年に比べ0.03ポイント上がった。0.03ポイントの上昇が実数でいくらかというと、各紙が報じているように1,332人という。07年に生まれた子は108 万9,818人だったのが、109 万1,150人に増えた、ということだ。

 ところで、08年はうるう年である。07年の365日に対し、08年は1日増えたわけだから、女性の出産傾向が同じだったとすると、この1日分を足して08年には約3,000人増えておかしくない。実際に増えたのは1,332人である。これで前年に比べて子どもを産む率が高くなった、と言えるのだろうか。

 読売新聞と産経新聞の記述が分かりやすい。読売は「厚労省は合計特殊出生率の上昇について、出産期の女性の数自体が減少したのが主な要因と分析」、出生数が増えたことについては「08年はうるう年で、1日増えたことが主な理由と見ている」と書いている。産経新聞も「(合計特殊出生率増は)30代の出生率上昇などが要因…(出生数増は)閏(うるう)年だった影響が大きい」と分かりやすい。

 一方、うるう年の影響について一切、触れていない新聞もある。

 女性が子供を産むのは、簡単な話ではない。出生率向上は社会全体で取り組むべき問題だ、というのは今や多くの人が同意する考え方ではないかと思われる。少子化の傾向やマイナス面だけでなく、女性や若いカップルを勇気づけるような報道の意義と効果はあるだろうが、「合計特殊出生率が3年連続上昇」という点だけをあまり強調するのはどうだろう。

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