レビュー

ネット革命で新聞業界も大変革期に

2007.10.02

 10月1日は、長い日本の新聞業界の歴史でも特筆される日の一つとなりそうだ。この日毎日新聞、産経新聞の両紙がネットサービス強化に向けて大きくかじを切ったのに続き、同日、日経新聞、朝日新聞、読売新聞の3紙の社長が共同記者会見を開き、ネットでのニュース配信と新聞販売面で協力態勢をとることを明らかにした。

 2日の読売朝刊によると、共同記者会見には「67社約240人の記者が集まった」という。ネット時代への対応で、試行錯誤を続けるマスメディア業界自体が、真っ先にこの動きに注目したということだろう。2日早朝の民放ラジオ番組も、TBSラジオのキャスター、森本毅郎氏や、ニッポン放送の新番組「上柳昌彦のお早うGoodDay」のコメンテーター、竹中平蔵氏が、それぞれ真っ先にこの動きを紹介、解説していた。

 3紙の合意書によると「インターネット及びその他の電子媒体におけるニュース発信等に関し、共同事業を開発・実行し、インターネット分野での新聞の意義を高めるとともに、この分野での収益性の向上を目指す」ことが、うたわれている。

 「ネットに発信されているニュースの大半は新聞社や通信社の記者が取材して記事にしており、他の媒体も新聞の情報に大きく依存している」(日経2日朝刊)。にもかかわらず、現状では、ネットからの大きな収益が見込めず、このままでは新聞社の経営を難しくしかねないという共通の危機意識が根底にあることがうかがわれる。

 では、3紙は何をしようとしているのか。「3社の主な記事や社説を比較し、3社のニュースサイトに簡単に接続できる無料のサービスを08年初めにスタートさせる」(朝日2日朝刊)という。日経は「三紙の論調の違いを読み比べできるサービスは新聞各社サイトの集客力を上げる一つの試みとなる」と書いている。読売はさらに詳しい。「3社で取り組む共同ニュースサイトは、3社の記事の『読み比べ』を最大の特徴に掲げている。共同サイトは、3社の記者が衆目の中で記事の質を競い合う、戦いの舞台となる。…この結果、3紙の読者は、より高品質の記事を期待できるようになる」

 ネットサービス強化への転換で先行する動きを見せている新聞の反応はどうか。毎日は短い記事で要点を伝えただけだが、産経はトップ記事、さらに総合面でも3社社長の記者会見の質疑応答を伝えるという手厚い扱いだった。

 「3社の軸足はネットより紙媒体にある」と指摘し、「紙媒体の締め切り時間にとらわれず紙媒体以上の内容をネットに盛り込む」産経との違いを強調している。1日行われた秋田の連続児童殺害事件公判について「新聞紙上では掲載されない法廷でのナマのやりとりを速報」した結果、産経グループサイトへの閲覧者数が許容量を超え、「システム障害の一因となるほど加速度的に増加した」事実も伝えている。

 産経が指摘するように、日経、朝日、読売の協力の動きが「『詳細は紙面で』という紙媒体優先の姿勢」なのかどうか。メディア業界以外からも、引き続き、大きな関心を集めそうだ。(読売、日経、朝日、産経各紙の引用は東京版から)

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