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新潟県中越沖地震断層は、巨大断層の一部?

2007.07.30

 新潟中越沖地震の震源分布とこれまで分かっている周辺の地下構造を照らし合わせると、震源断層は越後平野南部の鳥越断層と連続している可能性が高い、という東京大学地震研究所グループの解析結果が、読売新聞、毎日新聞の28日朝刊に載っている。

 鳥越断層とはいかなる断層か。「政府の地震調査委員会は、鳥越断層を比較的活動度が高いと位置づけており、同断層を含む『長岡平野西縁断層帯』全体が活動した場合、マグニチュード8.0の大きな地震を起こす可能性があるとしている」と読売新聞は書いている。

 この記事の基になったとみられる研究報告が、地震研究所の新潟中越沖地震特集ページに載っている(「新しい余震観測データに基づく2007年新潟県中越沖地震の地質学的解釈」)。

 佐藤比呂志教授、加藤直子・産学官連携研究員の報告によると、余震分布から推定された震源断層は約40度西向きに傾斜する断層で、地下16キロの深さまで広がっている。この断層を陸側に延長すると、重力探査などから得られた地下構造との一致がみられ、東側にある鳥越断層につながる可能性が高い、というものだ。

 越後平野の海岸沿いには隆起帯がみられるが、報告によると「これらの構造の特徴は、本震を引き起こした40度ほど西に傾斜する断層の運動の蓄積によって、海岸沿いの隆起帯が形成されて来たことを示している」という。今回の地震を起こしたと推定される逆断層(日本海側から日本列島側にせり上がる)の動きが、過去に何度も繰り返された結果、海岸沿いの隆起帯ができた、ということだろう。

 また佐藤教授らは次のようにも書いている。「新潟地域の地震活動を理解するためには、その地質学的背景を理解する必要がある。かつてユーラシア大陸の東端に位置していた日本列島は、日本海の形成とともに、大陸から分かれて現在の位置に定置した。この一連の出来事は、現在の日本列島の基本的な地質構造に大きな影響を与えている。この日本海拡大の最後の過程で、…佐渡島や男鹿半島の東側に、リフト系が形成された」

 このリフト系というのは「厚さ6キロを超える堆積物と玄武岩を主とした火山砕屑岩の分布で特徴づけられる。今回の震源域の中越沖もこのリフト内に位置している」ということだ。

 原子力発電所の耐震設計にあたっては、周辺の断層によって起こる可能性のある地震動を重視することになっている。しかし、日本海の生成にまでさかのぼってその地域の地質構造の特徴まで考慮に入れる、ということは恐らくしていなかったのではないだろうか。原発の耐震設計にあたって、地質学的にそこが適地かどうか、どこまで検討の範囲を広げるのが合理的なのか。今回の地震が投げかけた大きな問題の一つになるかもしれない。(読売新聞、毎日新聞の引用は東京版から)

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