レビュー

編集だよりー 2007年7月12日編集だより

2007.07.12

小岩井忠道

 大学に入るまで生物が細胞でできていることも知らなかった。ノーベル医学生理学賞を受賞した利根川進氏が何かに書いていたのを読んで、少々、驚いたことがある。「生物」を高校時代習わなかったからだというので、氏が卒業した日比谷高校は、生物が理科の必修科目ではなかったのか、と。

 編集者は高校時代、生物をちゃんと履修した。授業は受けたけれど、中間試験だったかで零点近い点数を取り、生物の教師に「落第点を付けるぞ」と怒られたことがある。

 地質ニュース7月号に載っている岩松氏の論文(12日レビュー「地質学は元気になれるか?」参照)を読みながら、昔の不行状を思い出した。理工系志望の高校生は「物理」「化学」で大学を受験するのが常識。受験に関係のない「生物」の授業くらい睡眠を取らせてほしい。放課後にきつい運動部の練習が待っていることだし…。誠にけちくさい考えに基づくものだった。

 その当時から岩松氏が地盤沈下を嘆く「地学」はすでに「生物」よりもっと日陰の位置にあり、ごく一部の生徒が「物理」や「化学」の代わりに履修していただけだったように思う。

 もう10年以上前、いや20年くらい前のことだろうか。その後、科学技術事務次官などの要職を務めることになる人と雑談していたときのことだ。話の脈絡は忘れたが、その人がこう言っていたのを思い出す。「理科の中でこれまで『生物』『地学』というのは陰がうすかったけれど、よく考えると、こちらの方が『物理』や『化学』よりよほど難しいことは明らかですよね」

 岩松氏によると、わずかにいる高校の地学の教師は団塊の世代が大部分で、ここ2、3年で相次ぎ定年を迎える、という。

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