レビュー

編集だよりー 2007年6月10日編集だより

2007.06.10

小岩井忠道

 「定年になったら油絵に集中する」。電器・音響メーカー勤務中から言っていた高校の同級生が、「日洋展」に入選したというので、今評判の「国立新美術館」に出かけた。メールで連絡を取り合ったところ同級生7人が集まり、ご本人の案内で出展作品を鑑賞した後、近くの焼き鳥店で、一杯となる。

 「数年前から始めた絵が…」という本人の手紙を真に受けて、展覧会に出かける前に知り合いのキュレーターに聞いたら「数年で、『上野の森美術展』、『日洋展』に続けざまに入選するというのは、ただごとではない」という。確かめてみたら、数年というのは謙遜で、やはり高校時代から描いていたということだった。

 それにしても、サラリーマン生活がいつまでも続くわけではない、と定年の数年前にいち早く気持ちを切り替えたというのには、感心する。

 高校の同級生といえば、国土事務次官や総合研究開発機構(NIRA)理事長などさまざまな公職を務めた(田中角栄・元首相の『日本列島改造論』誕生に重要な役割を果たしたといった方が有名か?)高校(旧制中学)の先輩、下河辺淳氏に同窓会で講演してもらったことを思い出す。25年も前の話だが、氏は既に当時、こんなことを話していた。

 「21世紀を迎えるに当たって、この20世紀においてどうしても人生80歳という社会制度を作っておく必要が出てきている。…この人生80歳ということをもうちょっと違った角度から見てみたいと思う。80歳つまり80年を時間に直すと70万時間となる」

 まず寝たり食べたりといった動物として必要な時間が半分の35万時間。「大学まで勉強して、死ぬまで一生懸命働いても時間にしたら10万時間」。従って、「残りの25万時間どうするのかということが人生80歳にとって非常に重要になってくる」ということだった。

 この日早朝、NHKラジオ毎週日曜日の番組「当世キーワード」で新語アナリスト、亀井肇氏が「7万時間」という“新語”について解説していた。60歳になって定年を迎えた平均的な日本人が「さて、これからの人生は」と考えたときに、何かをしなければならない時間が、まだ7万時間あるということだった。

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