レビュー

編集だよりー 2007年6月7日編集だより

2007.06.07

小岩井忠道

 サイエンスポータルが7日で開設1周年を迎えた。活字メディアの習性や価値観が染みこんでしまっている編集者としては、文字通り試行錯誤の1年で、思い起こすことは冷や汗が出るようなことばかりだ。例えば、ブログというのも、この仕事にかかわるまで知らなかったくらいだから(言葉自体は聞いたことがあるような気はするが、自分にはかかわりのないことと聞き流していたので)。

 先日、科学のあり方を真摯に考え、ウェブサイトでも果敢な情報発信と議論を展開している立花浩司氏と話をする機会があった。当サイトの記事がきっかけとなり、氏が関与するウェブ上で活発な議論が展開されたという。「身が引き締まるような思い」。手垢の付いた表現しか思い浮かばないような驚きであった。当サイトの記事が、こちらが考えている以上に真剣に読まれているということを知ってである。

 テレビ界で何かことが起きるたびに「視聴率」の功罪、というよりマイナス面がやり玉に上がる。しかし、それで視聴率の威力にかげりが見え、視聴率を提供している会社が困ったという話は聞いたことがない。通信社に勤めているころ、仕事でテレビ局を訪ねたことは何度もある。受付の脇に「今週(月)も視聴率3冠確保」といったビラをいつも貼りだしているキー局があった(その後、別の局に取って代わられたようだが)。それ以来、確信している。視聴率競争というのは、まずなくならない、と。

 一方、何年も前になるが、米国では同じ視聴率でも、内容によって評価に差があるという話を読んだことがある。米国にはNHKのような局はないから、皆、受像機さえ買えば主要テレビ局の番組はただで見ることができる。ただし、直接、電波を受信する人々とともに、ケーブルテレビで有料、無料の番組を見ている視聴者も多い。ケーブルテレビの受信世帯の数字の方が、同じ視聴率でも評価は高いというのだ。こちらの方が富裕層が多いから、当然購買力も強く、宣伝効果は高いという理由である(日本でもある一定以上の年齢層の視聴率というのは“区別”されているらしい。購買力がない層として)。

 視聴率の扱いの当否はさておき、サイエンスポータルも、熱心に見てくださる「固定客」の皆さんからそっぽを向かれる事態はなんとしても避けなければならない。開設1年を機にあらためて思った次第だ。これまで科学にはあまり興味を持たなかった人々にも見てもらえるよう、一層の努力を続けるとともに。

 1周年にあたりこれまでよく読んでいただけた記事のランキングを掲載した(アクセスランキング参照)。「読み物、コラム」の方は、連載回数が多いコンテンツ、古いコンテンツの方が、当然アクセス数は多くなる。単発もの、最近掲載のものが、上位にランクされていないからといって、関心が薄いとは考えていない。

 一方、「ニュース、レビュー」の方は、月間のアクセス数で比較しているから掲載日などによる有利不利はあまりなさそうだ(1月のトップはなんと元旦掲載のニュースである)。これを眺めてみると、読者層というのが見えてくるような気がして、編集者としてはうれしい。こちらが、これはと思って掲載した記事が、きちんと読まれていると分かるからだ。

 これからもサイエンスポータルになにとぞ温かいご支援と、ご叱責(こちらはできれば落ち込まない程度に)をお願いします。

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