インタビュー

第3回「時代の要求に合わせ発展を」(李 象益 氏 / 中国自然科学博物館協会 名誉理事長、元・中国科学技術館長)

2009.08.03

李 象益 氏 / 中国自然科学博物館協会 名誉理事長、元・中国科学技術館長

「文明都市に必須な科学技術館」

李 象益 氏
李 象益 氏

中国で科学技術館活動を長い間指導し、最近では活動の場を国際博物館会議にも広げている李 象益・中国自然科学博物館協会名誉理事長が日本科学未来館主催のフォーラム「科学コミュニケーションのネットワーク構築に向けて」の講演者として来日した。中国がなぜ、どのように科学技術館活動に力を入れているのか、李氏に尋ねた。

科学技術館にとって重要なことは、頻繁な転換と刷新です。教育活動に注意を払わない刷新研究は許されないことです。展示品などのハードだけに注意し、ソフトに注意を払わないようではいけません。科学技術館の建設後、ちやほやされるのは1、2年程度で、その後、見る人はいなくなり、来館者も徐々に減ってきてしまいます。ですから、教育活動の側面からの研究を強化するように注意していかなければなりません。

さらに一点、科学技術館の理念を絶えず拡大し、人々と政府の間の交流のための重要なプラットフォームとし、さらに大きな社会的価値を作り出していかなくてはなりません。中国にはこんな言葉があります。「発展とは確定された道理である」。科学技術館は時代の要求に適合した一種の新しい理念として、停滞せず、絶えず発展していくことが必要です。

科学技術館の未来とは一体どのようなものでしょうか。私は四つあると思います。第一に、最も重要な特徴とは、「人が主体の、生活密着型」というものです。注意していただきたいのは、この問題について「内容志向」でいくということです。さもなければ、一般大衆の共感は得られません。

第二に、「社会が注目している最先端の問題に関心を払うこと」です。科学技術とは、総じて前向きなものです。人々は未来に対して、あふれんばかりの希望を持っています。第三に、単に知識を伝達するだけではないということに注意しなくてはなりません。そこにとどまり続けてはならず、科学の思想や科学の方法にまで昇華していかなくてはならないのです。

第四に、人文科学と自然科学のコラボレーションというところまでさらに一歩進めてみるということです。それを精神的価値観にまで高めることにより、公衆、特に青少年が科学を愛し、科学の精神に身を捧げるよう、彼らの心を燃え立たせるのです。

私は、日本の科学技術館は世界の科学技術館の中において重要な地位を占めていると思います。応用科学の中心理念の側面において人々を信服させる成果を挙げているからです。例えば、日本科学未来館、奈良の「私のしごと館」など、すべて応用の面で創造性を発揮しています。日本の科学技術館は、基本理念を推進し、多元的な形式や多種にわたる技術運用を作り出したことで、世界の科学技術館や科学センターの発展に非常に大きな影響を与えてきたと言うべきでしょう。私は、さらに強い自信を持つべきだと思います。

(完)

李 象益 氏
李 象益 氏

李 象益 氏のプロフィール
1961年北京航空航天大学卒、その後、同大学でジェット・エンジンを研究。81年中国科学技術館副館長。91年中国科学技術協会科学普及部部長。95年中国科学技術館館長。2000年中国自然科学博物館協会理事長、01年中国科学技術協会会長。現在、中国自然科学博物館協会名誉理事長、中国科学技術協会全国委員会委員。北京市人民政府諮問委員会顧問。北京大学、北京師範大学教授。04年から国際博物館会議執行協議会委員も。

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