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日本の風力発電量は増加しながらも世界主要国に大きく立ち遅れ

掲載日:2017年7月13日

風力は資源としては太陽光とともに無尽蔵で典型的な自然エネルギーだ。風力発電が再生可能エネルギーとして世界の主要国で導入が拡大している。そうした流れの中で日本は、風力発電量は増えてはいるものの総発電量に占める割合は主要国比較で依然低い。このことは一般にはあまり知られていない。世界の流れにこれ以上立ち遅れないためには今以上の具体的な導入推進策が必要だろう。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2017年3月末時点の「風力発電設備・導入実績」をこのほど公表した。それによると、風力発電の総発電能力を示す設備容量は約336万キロワットで、前年度比(年度単位で集計)8%近く増加した。設備容量は設置基数ともに毎年増えている(図参照)実態が示された。

日本の風力発電総量は約336万キロワット

NEDOは、「商用電力系統に接続されて総出力が20キロワット以上」などいくつかの条件を満たす風力発電設備を調査対象に「設置基数」「総出力」「設置者」「設置場所(都道府県、市町村)」「風車メーカー」などを集計し、毎年公表している。今回の公表によると、2017年3月末時点の設備容量は、前年度比7.8%増の約336万キロワットで、設置基数は同5.0%増の2,203基だった。2016年度中に設備容量約24万キロワット、設置基数105基の風力発電設備が新たに導入されていた(数値は設備の廃止・撤去も考慮に入れた合計値)。

設備容量で多い都道府県は1位が青森県で設備容量約39万キロワット、設置基数239基。以下秋田県、北海道、鹿児島県、三重県の順だった。大半の都道府県が多少なりとも風力発電設備を設置している。東京都には東京臨海風力発電所など4基あり、設備容量は4,150キロワット。設備が全くないのは埼玉、山梨、長野、大阪、岡山、広島、香川の各府県だった。

図1 日本の風力発電導入量の推移(提供・NEDO)
図1 日本の風力発電導入量の推移(提供・NEDO)
写真 東京都の中央防波堤内側埋立地内に設置された東京臨海風力発電所。「東京風ぐるま」の愛称が付いている。電源開発と豊田通商が東京都との「協働事業」として設立した「ジェイウインド」(旧名・ジェイウインド東京)が建設・運転管理主体。2003年に事業開始し、発電電力は全量東京電力に売電している(提供・電源開発)
写真 東京都の中央防波堤内側埋立地内に設置された東京臨海風力発電所。「東京風ぐるま」の愛称が付いている。電源開発と豊田通商が東京都との「協働事業」として設立した「ジェイウインド」(旧名・ジェイウインド東京)が建設・運転管理主体。2003年に事業開始し、発電電力は全量東京電力に売電している(提供・電源開発)

風力発電は風の運動エネルギーで風車を回し、その動力を発電機に伝えて発電する。風車の形はプロペラ型が多い。この形状が風のエネルギーの利用効率が高いためだ。風力発電はクリーンで純国産の自然エネルギーだが短所もある。最大の短所は「風任せ」なこと。風力発電事業も推進している「電源開発(J-POWER)」(本社・東京都中央区)によると、「風任せ」であることから「エネルギー密度」が低く、電力の出力調整が難しい。しかし、こうした短所を克服するためにさまざまな工夫がなされている。例えば、風車を一定の敷地内に集中させる「ウィンドファーム」方式を採用し、局地的に不安定な風の影響を受ける個々の風車のばらつきをうまくまとめて電圧と周波数への影響をなるべく少なくしているという。このほか、風車を支えるタワーを高くして上空の強い風を活用することや、風車の直径を大きくして1基あたりの出力を増やすことなど、数々の努力がなされているという。

風のエネルギーは風速の3乗に比例する。このため風力発電設備は年間を通じて風が安定して強い場所に立地することが重要とされる。立地選択に際しては特定の場所の風の吹き方を示す「風況」の調査が行われる。電源開発では地形と風車の相互干渉などによる風況変動をシミュレーション解析する研究も実施して立地選定に役立てている。

日本は世界19 位 、30年の電源比率でも1.7%

日本政府は2014年4月11日に閣議決定した「エネルギー基本計画」の中で再生可能エネルギーの導入を加速する方針も示している。風力発電については、風力発電設備をより短期間に導入するために環境アセスメントをスピーディに行い、関連する諸規制の合理化を進めるとともに、洋上風力発電の実証研究を推進することにしている。

しかし、世界の動向をみると、中国や米国など世界の多くの国が風力発電の総量を大きく増やしている中で日本の数値は目立って低い。日本は2012年に始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度により風力発電設備も増えてはいるが、今回公表された約336万キロワットは国内の総発電量の占める割合でみるとゼロコンマ数%レベルの数字。政府が2015年7月にまとめた2030年の電源構成比率、つまり30年段階での比率目標でもわずか1.7%程度だ(図2参照)。

風力発電関連事業らで構成される日本風力発電協会(東京都港区)は昨年2月に「風力発電の導入拡大に向けて」と題したレポートを公表した。その中で世界主要国の風力発電導入の動向を取り上げて各国のデータを示している。それによると、2014年1年間で中国は2,320万キロワット、ドイツは530万キロワット、米国は490万キロワットそれぞれ新規導入し、中国の累積導入発電量は1億2,000万キロワットに迫っている。また国際エネルギー機関(IEA)の推計を引用して、世界の風力発電総量は2040年にかけて10億キロワット以上の伸びが見込まれるとしている。2014年段階の累積導入発電量比較で日本は中国、インドや欧米各国に大きく立ち遅れて世界19位だった(図3参照)。

図2 2030年の電源構成比率。再生可能エネルギーは22~24%。うち風力は1.7%程度(2015年5月公表された経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」から)(提供・経済産業省)
図2 2030年の電源構成比率。再生可能エネルギーは22~24%。うち風力は1.7%程度(2015年5月公表された経済産業省の「長期エネルギー需給見通し」から)(提供・経済産業省)
図3 世界の風力発電導入先進国。10位まで。日本は19位(提供・日本風力発電協会,同協会レポート「風力発電の導入拡大に向けて」より)
図3 世界の風力発電導入先進国。10位まで。日本は19位(提供・日本風力発電協会,同協会レポート「風力発電の導入拡大に向けて」より)

環境省などによると、風力発電の適地である北海道や東北地方などでは送電線整備が遅れているほか、環境影響評価(アセスメント)に時間がかかること、農地などの土地利用規制の現状なども日本の導入促進を阻んでいる要因という。日本風力発電協会は「風力発電の導入拡大に向けて」の中で導入拡大実現のための課題として「適地拡大に向けた規制・制度の見直しと緩和」「コスト効率化のための技術開発の継続」「(人材の育成を含めた)プロジェクト・マネジメント・スキルの向上」「国内での関連産業の育成」「(立地地元との共生を含めた)国民理解の推進」などを挙げている。

環境先進国ドイツなど欧州各国のほか、中国なども再生可能エネルギー分野への投資を活発に行っている。世界のエネルギー問題の分析で知られる国際民間調査機関「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)」は世界の太陽光、風力発電が今後急速に拡大して2040年にはこの二つだけで世界の総発電量に占める比率は38%になる、とする予測を6月に公表している。地球温暖化対策の国際枠組みのパリ協定は産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える目標を掲げて参加各国に大胆な政策を求めている。パリ協定に参加する日本は太陽光発電とともに風力発電も増やすための具体的な普及推進策が一層重要になっている。

(サイエンスポータル編集長 内城喜貴)

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