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能登半島地震で津波4メートル以上遡上 東大地震研など緊急現地調査

2024.01.05

 能登半島地震により石川県志賀町の漁港で津波が陸上を推定4メートル以上遡上(そじょう)したことが東京大学地震研究所などの研究チームの現地緊急調査で明らかになった。同研究所が4日発表した。津波の遡上高は陸上をはい上がった時の高さ。海岸での観測値とは異なるが、安全確保上重要な指標だ。チームの調査結果は大津波警報が出された今回の津波が実際に極めて危険な津波だったことを示している。

 緊急調査の研究チームは東大地震研の石山達也准教授のほか、信州大学、岡山大学、富山大学の研究者で構成され、地震翌日の2日から能登半島北部の海岸地形調査を実施した。石川県志賀町や輪島市で海岸の隆起などを調査した結果、複数地点で津波の痕跡を確認した。

石川県志賀町の赤崎漁港の倉庫に残された津波の痕跡。2024年1月3日午後4時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)
石川県志賀町の赤崎漁港の倉庫に残された津波の痕跡。2024年1月3日午後4時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)

 志賀町の赤崎漁港での調査では倉庫の外壁に残された津波の痕跡や海岸部から陸上に打ち上げられた漂流物などを発見。これらの分析から津波の遡上高約4.2メートルと推定できるとした。

 また、輪島市の鹿磯漁港では約3.9メートルの隆起があった。同漁港東の砂浜海岸では約3.2メートルの隆起と約250メートルの海岸線の前進も発見。3メートルを超える海岸隆起は同漁港から南北約4キロの範囲の海岸線沿いで確認した。輪島市門前町池田以南の海岸では2メートル未満の隆起もあったという。

地震により隆起した石川県輪島市鹿磯漁港の一部。2024年1月3日午前11時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)
地震により隆起した石川県輪島市鹿磯漁港の一部。2024年1月3日午前11時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)

 志賀町の赤崎漁港の隆起は約25センチ程度にとどまっており、研究チームは隆起が小さかった海岸沿いで津波被害があったとみている。

 国土地理院は陸域観測技術衛星2号「だいち2号」のレーダー観測の解析から震源に近い輪島市西部で最大4メートルの隆起があったと発表しているが、東大地震研などの現地調査結果は衛星からの推定値とほぼ一致している。

石川県志賀町の赤崎漁港の津波被害の状況。2024年1月3日午後4時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)
石川県志賀町の赤崎漁港の津波被害の状況。2024年1月3日午後4時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)
石川県輪島市鹿磯漁港の東側の、地震により前進した海岸線。2024年1月3日午前11時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)
石川県輪島市鹿磯漁港の東側の、地震により前進した海岸線。2024年1月3日午前11時撮影(東京大学地震研究所などの研究チーム提供)

 政府の非常災害対策本部は5日、生存率が下がるとされる「地震発生後72時間」が過ぎたが、引き続き救助、支援活動に全力を挙げることを確認。自衛隊派遣態勢を拡充するなど、被災地で警察や消防と連携して安否確認や捜索を急いだ。

 5日午前段階で安否不明者数は200人を大きく超え、確認された被害は拡大している。被災地の家屋、建物倒壊の詳しい実態は不明だが、国土交通省は同日、土砂災害は42件(午後3時15分時点)に上ったと発表した。

能登半島地震の土砂災害発生状況(午前段階、国土交通省提供)午後42件に増加
能登半島地震の土砂災害発生状況(午前段階、国土交通省提供)午後42件に増加

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