ニュース

量子コンピューターとスパコン連携、研究開発に着手 理研など

2023.12.05

 次世代の量子コンピューターと、従来型のスーパーコンピューターを連携させ、高度な計算をより幅広い領域で行うための研究開発を始める、と理化学研究所が発表した。2つのタイプの商用量子コンピューターを新たに導入し、世界屈指の実力を持つスパコン「富岳」などを活用。企業や大学と共に、これらを連携させるシステムソフトウェアの開発を目指す。

スーパーコンピューター「富岳」=神戸市(理化学研究所提供)
スーパーコンピューター「富岳」=神戸市(理化学研究所提供)

 経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した開発テーマに対し、理研とソフトバンクの共同提案が採択されたもの。期間は5年。

 従来のコンピューターは半導体にかかる電圧の高低によって0と1を表し、2進法で演算する。これに対し量子コンピューターは、物質を構成する原子や電子など「量子」の世界の物理法則である、量子力学に基づき計算する。動作原理は全く異なり、量子力学の世界の、0と1が重なって同時に存在する状態を利用し、多数の計算を並列化する。

量子コンピューター試作機「叡」=今年3月、埼玉県和光市
量子コンピューター試作機「叡」=今年3月、埼玉県和光市

 人工知能(AI)や、デジタル技術で社会を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)が進展するなどして情報量が増え続ける中、半導体の性能アップではコンピューターの性能の限界がみえており、量子コンピューターへの期待が高まっている。複雑な問題での活用が見込まれ、物理や化学、数学、創薬、医療、エネルギー、AI、金融、物流などへの利用が想定されている。世界的に研究開発が激化する中、理研などは国産初の試作機を開発し今年3月、外部の研究機関などが利用するクラウドサービスを開始。10月に同機を「叡(えい)」と命名している。

 ただ量子コンピューターは、現時点では計算規模と正確さの両立などの点で、多くの課題が残っている。実用化のため、スパコンなど従来のコンピューターと組み合わせ、最適化やエラーの緩和などをスパコンで行うことが有望視されている。

 そこで理研などが、両者を連携させるための研究開発に着手する。連携のためのソフトウェアのほかプラットフォーム、アプリケーションを開発。スパコンだけの場合と比べ優位で、次世代通信技術システム「ポスト5G」の時代に有効な技術となるかどうかなどを検証していく。

 さまざまなタイプの量子コンピューターが開発途上にあり、効果的な組み合わせなどを検証する必要がある。この事業では、技術が比較的先行している「超電導型」と、空間に留めたイオンの性質を利用する「イオントラップ型」の2タイプの商用量子コンピューターを導入。超電導型は神戸市の理研計算科学研究センターの、富岳と同じ建物内に設置。イオントラップ型は埼玉県和光市の理研本部に置く。これらと富岳や、参加する東京大学や大阪大学のスパコンを連携させる。

 量子コンピューターは従来、パソコンやワークステーションなどの小規模な従来型コンピューターを連携させてきたという。同センター量子HPC連携プラットフォーム部門の佐藤三久部門長は11月22日の会見で「最先端の量子コンピューターの規模は100量子ビットを超え、スパコンの計算能力が必要な領域に入りつつある。先回りして取り組みたい」と話した。

複数の量子コンピューターやスパコンが連携するプラットフォーム(理研提供)
複数の量子コンピューターやスパコンが連携するプラットフォーム(理研提供)

関連記事

ページトップへ