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はやぶさ2探査のリュウグウ、太陽系形成時の貴ガス多く保持 試料で判明

2022.10.26

 探査機「はやぶさ2」が探査した小惑星「リュウグウ」は、46億年前の太陽系形成時の貴ガスと呼ばれる物質を豊富に保持していることが分かった。九州大学などの研究グループが、地球に持ち帰られた試料を分析して発表した。リュウグウの試料が太陽系形成の謎に迫る手がかりとなることが、改めて示された。この星が火星と木星の間の小惑星帯から外れて地球に近い軌道に移動したのが、500万年前だったことも突き止めた。

はやぶさ2による1回目の試料採取の想像図(池下章裕氏提供)
はやぶさ2による1回目の試料採取の想像図(池下章裕氏提供)

 はやぶさ2が採取した試料が入ったカプセルは、2020年12月に地球に帰還。直後にカプセル内部のガスだけを取り出した後、固体の試料は基本観察を経て、一部が初期分析の専門6チームなど8つのチームにより分析されている。

はやぶさ2の1回目の試料採取で得られた試料(九州大学提供)
はやぶさ2の1回目の試料採取で得られた試料(九州大学提供)

 このうち九州大学などの「揮発性成分分析チーム」は、はやぶさ2が1回目に地表から採取した試料と、地下物質を含むとみられる2回目の試料の計16個を分析。これらを加熱し、ガス状態のヘリウムやネオンなどの貴ガスを取り出して同位体分析を試みた。これらは揮発性が高く不活性で反応しにくいため、リュウグウの起源などを知る手がかりになる。

 その結果、リュウグウの材料となった物質が、太陽系形成時に周囲の貴ガスを取り込み、そのまま保持していることが分かった。その含有量は、地球に落下して分析されてきたどの隕石より多いという。太陽系形成前、いずれかの星で作られた貴ガスが含まれていることも分かった。リュウグウは元の天体が衝突して壊れ、破片が再び集まってできたが、この過程でこうした物質を保持し続けたとみられる。

リュウグウ(宇宙航空研究開発機構=JAXA、東京大学など提供)
リュウグウ(宇宙航空研究開発機構=JAXA、東京大学など提供)

 宇宙を飛び交う高エネルギーの銀河宇宙線が、リュウグウ表面の物質に衝突してできる貴ガスも調べた。銀河宇宙線は地下1メートルほど深くまで到達する。作られたネオンの量などから計算した結果、採取の1回目と2回目のいずれの試料も、銀河宇宙線を500万年にわたり受けていることが分かった。この間、隕石などの衝突が頻繁ではなかったとみられる。このことから研究グループは、リュウグウは隕石などで混雑した小惑星帯を500万年前に離れ、現在のような地球に近づく軌道に移動し、その後は衝突を免れていると結論づけた。

 初期分析を統括する東京大学大学院理学系研究科の橘省吾教授(宇宙化学)は「観測だけでは決着がつかなった課題が、貴ガスの試料分析で解決した。初期分析でやりたかったことで、うれしい」と述べている。成果は米科学誌「サイエンス」に21日掲載された。

 また研究グループは、帰還したカプセル内にリュウグウから持ち帰ったガスが確かにあったと発表した。小惑星からガスを持ち帰ったのは史上初で、米科学誌「サイエンスアドバンシズ」に21日に掲載された。

 はやぶさ2は2018年6月~19年11月にリュウグウを探査し、その間の19年2月と7月の2回、着地して試料を採取した。「拡張ミッション」として次の探査先を目指し航行中で、26年7月に小惑星「2001CC21」に接近し、観測しながら引力を利用して加速。2回にわたり地球に接近した後、31年7月に小惑星「1998KY26」に到着する。

小惑星2001CC21に接近し通過していくはやぶさ2の想像図。JAXAが新たに公開した(池下章裕氏提供)
小惑星2001CC21に接近し通過していくはやぶさ2の想像図。JAXAが新たに公開した(池下章裕氏提供)

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