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日本版GPS「みちびき初号機後継機」打ち上げ成功 高精度測位に貢献

2021.10.27

 日本版の衛星利用測位システム(GPS)を担う政府の準天頂衛星「みちびき初号機後継機」を搭載したH2Aロケット44号機が26日午前11時19分37秒、鹿児島県の宇宙航空研究開発機構(JAXA)種子島宇宙センターから打ち上げられた。約28分後、衛星を正常に分離し打ち上げは成功した。10年超の運用により設計上の寿命を迎えた初号機の後継機。機能確認などを経て来年3月にも、地上の位置を高精度に測定するシステムに加わる。

「みちびき初号機後継機」を搭載し打ち上げられるH2Aロケット44号機=26日午前、鹿児島県南種子町の種子島宇宙センター(三菱重工業提供)

 スマホやカーナビなどで身近なGPSは、衛星から出た電波を地上などで受け、到達にかかる時間から距離を割り出して位置を特定する仕組み。世界的に利用が進んだ米国のGPS衛星は、30基ほどが運用中。ただ、衛星が日本上空から離れ電波が真上から届かないときや、電波がビルや山などに遮られると精度が低下する。また万一、米国が利用を制限すると影響が深刻だ。

 このため各国が独自システムの開発に乗り出す中、日本も米GPSを補完するみちびきの整備を進めている。2010年に初号機を打ち上げ、17年に4基からなる基本体制が整い、翌年にサービスを正式に開始した。今回の初号機後継機は17年に打ち上げた2、4号機と性能が同じで、衛星開発費は181億円、打ち上げ費用は109億円。運用に当たる内閣府宇宙開発戦略推進事務局の岡村直子審議官は、打ち上げ後の会見で「初号機から最新の衛星に代替されることで耐久性が向上し、より安定したサービスの提供が期待できる」と述べた。

 みちびき衛星の多くは、日本の真上付近(準天頂)で飛行時間が長くなる「準天頂軌道」を採用。地球の自転を止めた状態で考えると衛星が8の字を描くように動く軌道で、旧郵政省電波研究所(現情報通信研究機構)の研究者が1972年に考案した。3基以上あれば日本付近を24時間カバーする。運用中の初~4号機と初号機後継機のうち、3号機のみ静止衛星で、災害時の安否確認機能も搭載している。

準天頂軌道の概念図。地上を基準にみると、人工衛星が8の字を描く形となる(左は内閣府宇宙開発戦略推進事務局などの資料を基に作成、右は同局提供)

 2023年度をめどに強化して7基体制とし、米GPSに頼らない場合も十分な精度を発揮できるようにする。23年度に打ち上げる5号機は準天頂軌道、6号機は静止軌道、7号機は静止軌道に近い軌道を、それぞれ飛ぶという。

 欧州、ロシア、中国なども独自に構築する中、みちびきは米国のシステムと互換性が高く一体で利用できるのが特徴。一般にGPSの誤差は10メートル程度とされるが、みちびきの補強電波や地上の電子基準点を併用すると1メートルに。さらに専用受信機を使うと6センチに向上できる。

 みちびきはIT(情報技術)や防災に革新をもたらすほか、車や農機の自動運転、小型無人機ドローンによる物資輸送など、無人化や省力化を支える幅広い用途が期待される。みちびきが上空を飛ぶ東南アジアやオセアニアでの利用促進も図る。

打ち上げ前のみちびき初号機後継機(左)と運用中の想像図(内閣府宇宙開発戦略推進事務局提供)

 一方、H2Aは打ち上げ成功率97.72%、昨年5月に運用を終えた強化型のH2Bと合わせ47機連続成功となった。2001年の初打ち上げから20年を迎えたことについて、打ち上げを実施した三菱重工業の徳永建H2A打上執行責任者は「(07年にJAXAから打ち上げ業務を移管後)一つ一つ着実にやることをモットーとし、節目に来られたことは喜ばしい。実績を(開発中の後継機)H3に引き継いでいきたい」とした。

 宇宙基本計画工程表によると、政府は今年度中に「革新的衛星技術実証2号機」をイプシロンロケット5号機で、先進光学衛星「だいち3号」をH3初号機で、それぞれ打ち上げる。

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