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東大とIBM、商用で日本初の量子コンピューターを運用開始 技術開発や人材育成に活用

2021.07.28

 東京大学と日本アイ・ビー・エム(IBM)は27日、IBMが開発し、商用で日本初となる量子コンピューターを川崎市の「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター(KBIC)」に設置して運用を始めたと発表した。量子コンピューターはスーパーコンピューターでも長い時間がかかる膨大な計算を短時間で処理する次世代の超高速計算機。東京大学が運用の権利を持ち、企業や研究機関などと今後の技術開発や人材育成などに活用していくという。

「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」(川崎市)に設置された量子コンピューター「IBM Quantum System One」(IBM/東京大学提供)

 運用を開始したのはIBMが開発した「IBM Quantum System One」で、複数あるタイプのうち「量子ゲート」型と呼ばれる汎用タイプ。IBM製は既に米国やドイツに設置されており、日本からインターネットによりアクセスできるが、使用時間が制限されるなど活用の制約があった。

 東京大学と川崎市、日本IBMは6月に量子コンピューティング技術の普及と発展に関する基本協定を締結。27日午前、KBICで設置と運用開始の発表会を開催した。東京大学とIBMはまた、量子コンピューター技術の研究・開発を行うハードウェア・テストセンターを6月に同大浅野キャンパス(東京都文京区)に開設するなど連携している。

 発表会に参加した東京大学の藤井輝夫学長は「変化の早い量子技術分野で世界に伍して高度な社会実装を実現するためには、量子技術に関する要素やシステムの開発だけでなく、次世代人材の育成が極めて重要だ。(設置した)『IBM Quantum System One』を活用して次世代の量子ネイティブの育成をより一層進めていきたい」などとコメントしている。

 量子コンピューターは、物質を構成する原子や電子などのミクロな粒子(量子)の世界に特有な物理状態を応用している。従来型のコンピューターは情報を単位「ビット」の0か1で表し、多数のビットで複雑な情報を記録、計算する。これに対し量子の世界では「0と1のどちらもある」という「重ね合わせ」の原理を応用した「量子ビット」を使い、圧倒的に速く計算する。

 量子コンピューターの開発競争は熾烈で、IBMやグーグルを擁する米国が先行し、アリババ集団を持つ中国が猛追しているという。日本でも政府の大型研究プログラム「ムーンショット型研究開発制度」の「目標6」で経済、産業、安全保障を飛躍的に発展させる量子コンピューターの2050年までの実現、実用化を掲げるが、既にNECなど国内メーカーや研究機関も開発を進めている。

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