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中性子星とブラックホールの合体を初観測 米欧の重力波グループ

2021.07.01

 宇宙の中性子星とブラックホールの合体を初めて観測した、と米欧の重力波観測グループがそれぞれ発表した。観測は昨年1月に2回。両者が互いに回り合いながら合体する現象は数十年前から予言され、「ミッシングバイナリー」(まだ見ぬペア)として探索されてきた。

ブラックホールと中性子星が合体して重力波が発生する現象の概念図(オーストラリア・スウィンバーン工科大学カール・ノックス氏提供)
ブラックホールと中性子星が合体して重力波が発生する現象の概念図(オーストラリア・スウィンバーン工科大学カール・ノックス氏提供)

 質量が太陽の8倍以上の恒星は大爆発で一生を終える。その後、比較的大きい星は崩壊し、巨大な重力のために光さえ脱出できない天体、ブラックホールとなる。小さい星の場合、原子核を構成する粒子の一種である中性子を主成分とする高密度の天体、中性子星になる。

 重力波は、質量を持つ物体による時空のゆがみが、物体の運動により周囲に光速で伝わっていくもの。米国の2カ所の観測施設「LIGO(ライゴ)」や欧州の施設「VIRGO(バーゴ)」のグループは2015年以降、ブラックホール同士や中性子星同士の合体で生じた重力波を捉えてきたが、ブラックホールと中性子星の合体は未発見だった。2019年に観測した可能性があるとされたが、はっきりしなかった。

 両グループの資料によると、観測に初めて成功したのは昨年1月5日。地球から9億光年離れた場所で太陽の8.9倍の質量を持つブラックホールと1.9倍の中性子星が合体して生じた重力波を、LIGOの観測施設のうち1カ所で捉えた。わずか10日後の15日には、10億光年のかなたで太陽の5.7倍の質量のブラックホールと1.5倍の中性子星の合体による重力波を、両グループの計3カ所の施設全てで捉えた。

 今回の成果は、こうした激しい現象を引き起こす宇宙環境や、地球では再現し得ない極限状態の物理の理解につながるという。2回の観測を受け、地球から10億光年の範囲で月1回程度、ブラックホールと中性子星の合体が起こっていると見積もられた。

 成果は米天体物理学誌「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」に6月29日に掲載された。

 米欧に続き日本も岐阜県飛騨市に大型の重力波観測施設「KAGRA(かぐら)」を建設。今回の観測直後の昨年2月に本格観測を開始しており、今後は日米欧の連携による成果の拡大が期待される。

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