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国立感染研、新型コロナウイルス変異種の分離に成功 感染力が強い恐れ

2021.01.07

 英国で見つかり、感染力が強いとされる新型コロナウイルスの変異種の分離に、国立感染症研究所が成功した。分離したウイルスは病原性などの性質を詳しく解析することにより、治療薬やワクチンの開発研究に活用できる。同研究所は分離した変異種を近く国内外の研究機関に配布する予定だ。

 変異種は英国と南アフリカに由来する2種類があるが、今回分離されたのは英国で見つかった「VOC-202012/01」。同研究所は国内の空港の検疫所で感染が確認された人のサンプルから変異したウイルスを分離した。厚生労働省によると、日本国内では6日までに2種類合わせて25例確認されている。

国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの変異種「VOC-202012/01」の電子顕微鏡画像(国立感染研究所提供)
国立感染症研究所が分離した新型コロナウイルスの変異種「VOC-202012/01」の電子顕微鏡画像(国立感染研究所提供)

 VOC-202012/01について同研究所は「伝播のしやすさは最大70%程度増加することが示唆され、再生産数(R)を0.4以上増加させる」としている。ロンドン大学の研究者は「変異種の感染力の強さは従来のウイルス比で56%増」とする論文を発表している。

 新型コロナウイルスは一重らせん構造で変異しやすいことが知られている。感染力が強いと懸念されている変異種はVOC-202012/01のほか、南アフリカで見つかった「501Y.V2」もある。英国からの報道は、南アフリカ由来の変異種はより感染力が強いとする見方を伝えている。
 
 2種類の変異種の病原性について詳しいことは分かっていない。国立感染症研究所は「現時点では重症化を示唆するデータは認めないが、症例の大部分は重症化の可能性が低い60歳未満の人々であり、評価に注意が必要」としている。

 厚労省は変異種の監視体制を強化しているものの、具体的には検疫所などでの事実上水際対策の強化が中心。国内に一度入ってしまうと変異ウイルスを追跡するのは難しい。英国では変異種がまん延ウイルスの過半数を占めたころから感染者が一気に増加しており、日本国内でのまん延が強く懸念されている。

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