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「死者の一層の増加を懸念」 新型コロナ専門家組織が医療体制に強い危機感

2020.12.18

 厚生労働省に新型コロナウイルス感染症対策を助言する専門家組織(脇田隆字座長)は16日会合を開き、国内の最近の感染状況について「一度高止まりした後に直近で増加に転じ、過去最多の水準が続いている」、「新規感染者数の規模が大きく、高齢者数も多くなっている。今後重症者の増加はしばらく続く恐れがあり、死亡者数のさらなる増加が懸念される」などとする見解をまとめた。入院患者、重症者いずれの病床占有率も全国各地で上昇していることなどから、専門家組織は年末年始を控えた今後の医療体制に強い危機感を示している。

 また東京都によると、17日の都内の新規感染者は822人を数え、過去最多(16日の678人)を大幅に更新。都の感染状況モニタリング会議は医療体制の警戒度ランクを最も深刻な「ひっ迫している」に引き上げた。

 専門家組織の分析によると、9~15日の1週間に報告された感染者は1万8000人を超え、その前の1週間と比べて際立って増加した。人口10万人当たりの新規感染者をみると、全国平均で11月25日~12月1日に11.97人だったが12月9~15日には14.29人に、東京では22.37人から26.11人に、それぞれ増加している。

 専門家組織はまた、最近の統計では北海道や東京、大阪、兵庫など9都道府県の感染者が全国の75%を占めると指摘。その上で「人口規模の大きいところでまず感染が拡大し、それに続き、地方でも感染の拡大がみられ始めている。大都市における感染を抑制しなければ、地方での感染を抑えることも困難になる」と大都市での感染拡大阻止対策を強く求めた。

 厚労省によると、重症者も目立って増え続け、1日当たりの死者は15日に初めて50人を上回った。受け入れ確保病床に対する重症者の割合(重症者病床占有率)も上昇が続いている。11月25日から12月9日にかけ、全国平均で19.6%から23.6%に、東京都では50.0%から55.0%に、大阪府では49.5%から57.9%にそれぞれ上昇、その後もさらに上昇しているとみられる。専門家の多くは病床占有率の数字には現れない医療スタッフ不足の現状を指摘しており、大都市圏をはじめとして医療体制のひっ迫は確実に進んでいる。

入院者数、重症者数のいずれの病床占有率も全国規模で増加傾向が続き、医療体制のひっ迫が懸念されている(厚労省提供)
入院者数、重症者数のいずれの病床占有率も全国規模で増加傾向が続き、医療体制のひっ迫が懸念されている(厚労省提供)

 こうした状況に対して専門家組織は「予定された手術や救急の受け入れ制限など、通常医療への影響も見られており、各地で新型コロナの診療と通常の医療との両立が困難になる状況が懸念される」と指摘している。

米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)
米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RML)

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