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新型コロナとインフルの両方の検査を推奨 感染症学会が今冬の同時流行を予想

2020.08.18

 日本感染症学会(舘田一博理事長)が、この冬に新型コロナウイルス感染症(COVID-19、新型コロナ)とインフルエンザが同時に流行すると予想し、可能な限り新型コロナとインフルエンザの両方の検査を患者に行うよう一般の医療機関関係者に勧める提言を出した。症状だけで両者を見分けるのは難しいためで、詳しい提言内容を同学会ホームページに掲載している。

 日本感染症学会は、夏が訪れた後も毎日のように感染確認者の最高数が更新されていることを挙げて「予想されていたより早い時期に再流行に直面する中で、11月以降のインフルエンザシーズンのCOVID-19の対応には特別の注意が必要」と判断した。そして「インフルエンザ-COVID-19アドホック委員会」を設置してこの提言をまとめた。

 提言は「今冬のインフルエンザとCOVID-19に備えて」と題し、まず「冬季に新型コロナの大きな流行が予想されるが、インフルエンザの流行期と重なることで重大な事態になることが危惧される」と指摘した。そして、両方が流行すると一般の医療機関では新型コロナとインフルエンザの両方の患者を診断することになるが、臨床診断だけでインフルエンザの治療をしてしまうと新型コロナ感染を見逃してしまう恐れがあると指摘した。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)

 その上で「可及的に両方の検査を行うことを推奨する。検体はなるべく同時に採取する」としている。ただ、新型コロナの検査キットの供給が十分でない場合があるため、地域での新型コロナの流行状況や、患者の直近2週間の行動などを基に新型コロナの感染リスクを評価した上で検査の要否を判断するとした。

 この中で新型コロナの流行状況によっては先にインフルエンザの検査を行い、陽性と出た場合はインフルエンザの治療をして経過を見ることも考えられる、としている。その一方で医療関係者や高齢者、新型コロナの重症化リスクが高いとされる人に対しては積極的に検査することを求めた。

 インフルエンザの検査法として抗原迅速診断キットが広く普及している。新型コロナの検査法はPCR検査法のほか、抗原検出用キットが既に開発、認可されている。提言は、この抗原検出用キットについて「PCR検査より感度が低いとされているが、発症第1週に検査すれば感度・特異度とも高いとする報告もある」として、一般の医療機関での活用を推奨し、陽性、陰性それぞれの結果ごとに適切な措置を指示している。また、抗原検出用キットを使用する際は、結果が出るまでの約30分間に他の患者らへ感染させないために診断患者の居場所を考慮すべきとしている。

 このほか提言は、インフルエンザワクチンの接種を強く推奨した。新型コロナについては「現在開発中だが、臨床に導入されるようになれば、医療従事者や重症化リスクの高い人を中心に、接種対象者を規定する必要がある」と記している。

 提言は新型コロナとインフルエンザの相違点を学会見解としてまとめている。潜伏期間は、新型コロナは1〜14日(平均5.6日)、インフルエンザは1〜2日。ウイルスの排出ピークは、それぞれ発病1日前、発病後2〜3日後。また感染拡大の大きな要因とされている無症状感染については、新型コロナの無症状の率は各種報告を基に幅を持たせて数%〜60%とし、無症状患者でもウイルス量は多く感染力は強いとした。インフルエンザは10%で、患者のウイルス量は少ない、などと記載している。

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の電子顕微鏡画像(米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)提供)

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