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国内初のコロナワクチンの治験を開始 創薬ベンチャーの「アンジェス」

2020.07.01

 大阪大学発の創薬ベンチャー「アンジェス」(大阪府茨木市)が6月30日、同大学と共同で開発した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの安全性や効果を調べる国内初の臨床試験(治験)を大阪市立大学医学部附属病院(大阪市阿倍野区)で始めた。COVID-19は世界規模で感染者が1000万人を超えるなど、拡大が収まらない。現在、世界中でワクチン開発が活発に進み、治験は欧米や中国が先行している中で国内初の治験開始への期待は大きい。同社の計画では治験は来年7月までを予定しており、なるべく早い時期の製造販売承認を目指している。

国内初の新型コロナウイルス感染症ワクチンの治験が始まった大阪市立大学医学部附属病院(同病院のホームページから)
国内初の新型コロナウイルス感染症ワクチンの治験が始まった大阪市立大学医学部附属病院(同病院のホームページから)

 同社は次世代のバイオ医薬を開発するため、1999年12月に設立。昨年、国内初の遺伝子治療薬を発売して注目された。治験を行う大阪市立大学の審査委員会が6月下旬に治験計画を承認し、治験開始が決まった。

 アンジェスが開発したCOVID-19用のワクチンは、いくつかあるワクチンのタイプの中の「DNAワクチン」。新型コロナウイルスが人に感染する際に使う表面の「スパイクタンパク質」を作る遺伝子を人に投与。人体内でこのタンパク質を作らせ、免疫システムにウイルスを認識させてできた抗体がウイルス侵入時に攻撃するよう仕向ける。これが基本的な仕組みだ。ラットを使った動物実験では抗体ができることを確認できたという。DNAワクチンは製造期間やコストも抑えられるとして注目されている。

 治験計画によると、第1段階(第1相試験)では、COVID-19の感染歴がないなどの条件を満たす健常人を対象に、投与量の多いグループと少ないグループそれぞれ15人ずつに分けて、2週間間隔で2回ずつワクチンを筋肉注射する。抗体ができたことや安全性が確認されれば、秋にも次の段階(第2相試験)として対象を数百人から400人規模に拡大してさらに調べるという。

 世界保健機関(WHO)が5月中旬に公表したワクチン開発に関する報告書は約120の開発が進行中としたが、その後数十件以上増えているとみられる。このうち米バイオ企業モデルナや、英国のオックスフォード大と製薬大手アストラゼネカのグループなど、推定10以上のワクチン候補について治験が行われている。国内では、今回初めて治験が始まった開発例のほかに、国立感染症研究所・塩野義製薬グループや東京大学医科学研究所などが企業と連携しながらワクチン開発を進めている。

米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RM)
米国の患者から分離された新型コロナウイルスの電子顕微鏡画像(Credit: NIAID-RM)

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