宇宙から飛来する重力波を捉える大型低温重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」(岐阜県飛騨市神岡町)がこのほど観測を開始した。重力波望遠鏡は米国と欧州で既に稼働しているがアジアでは初めてで、欧米の重力波望遠鏡と協力しながら宇宙誕生の謎に迫ることが期待されている。
KAGRAは、東京大学宇宙線研究所を中心に、高エネルギー加速器研究機構、国立天文台など国内外の研究機関が協力して建設された。地下約200メートルに掘られた計約6キロメートルを超えるL字形のトンネル内で、真空パイプの中央部からレーザー光を照射して、重力波によるわずかなずれを検知する仕組み。L字の角部分にはパイプの中にレーザー光を発射する装置があり、L字の「両腕(アーム)」の先端部などにはレーザーを反射させる人工サファイアの鏡が設置されている。昨年10月に完成式典が行われ、その後感度を高めるための調整や試験運転が続けられてきた。本格的な観測となる連続運転は試運転を終えた2月25日に開始された。
宇宙の観測は長い間、天体から地球に届く可視光や赤外線、エックス線、電波などの電磁波を観測する望遠鏡が主役だった。これに対し重力波は、極めて質量が大きい天体が動いたときに生じる時空のゆがみがさざ波のように伝わる極めて微弱な現象。ブラックホールの合体など非常に重い天体の動きは観測が可能とされる。米国の重力波望遠鏡LIGOはアインシュタインが提唱した重力波を2015年に初めて検出して2017年のノーベル物理学賞を受賞した。KAGRAはこのLIGOなど、欧米の重力波観測網と協力しながら、宇宙がビッグバンで始まった直後の情報となる重力波を捉えて宇宙誕生の謎に迫る成果を挙げると期待されている。
KAGRAの研究代表者である宇宙線研究所長の梶田隆章教授は「研究チーム一丸となった準備をしてきたが、ようやく重力波観測を始めることができた。あらためてこれまでのご支援に感謝します。感度はまだまだですが、引き続き感度向上の努力を続けていきます」とのコメントを発表している。
関連リンク
- 東京大学宇宙線研究所プレスリリース「大型低温重力波望遠鏡KAGRA観測開始」