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iPS細胞を応用して世界で初めてパーキンソン病の治験を実施

2018.07.31

 ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から作製した神経細胞をパーキンソン病患者の脳内に移植する世界初の治験(臨床試験)計画を京都大学が30日、記者会見して明らかにした。パーキンソン病は現在根本的な治療法がない難病で、計画は新たな再生医療として期待される。一方で、治療法として確立するためには課題もあり、同大学関係者は適切、安全に計画を進める、としている。

 京都大学や同大学iPS細胞研究所(山中伸弥所長)、同大学医学部附属病院が公表したところによると、同病院の高橋良輔教授を治験責任医師とし、同研究所の高橋淳教授らの研究グループが協力して実施する。治験の対象患者は7人で、年齢50歳以上70歳未満、薬物治療では症状のコントロールが十分得られなかった、などを条件として選定する。8月1日から一連の治験を開始するという。

 iPS細胞応用の具体的な治療は、iPS細胞から作った神経細胞約500万個を、特殊な注射針のような器具を使って脳の線条体と呼ばれる部分に移植する。細胞移植のための入院期間は約1カ月を予定。移植に伴う拒絶反応が起こる可能性があるため免疫抑制剤も投与するという。

 パーキンソン病の国内患者は増加傾向にあり、2014年の厚生労働省統計によると約16万人でその後も増えていると予想される。神経変性疾患としては約53万人のアルツハイマー病に次いで2番目に多い。手足などが震えたり、こわばったりする症状が徐々に進行する難病。高齢になるほど発症率は高まるため、社会の高齢化により患者数も増えると予想されている。

 iPS細胞応用の臨床応用としてはこれまで、理化学研究所などがiPS細胞から作った網膜の細胞を目の重い病気の患者に移植し成功している。また大阪大学ではiPS細胞から作った心筋シートを重症心不全患者の心臓に移植する研究を進め、年度内の移植実施を計画している。

写真1 記者会見で治験の概要を説明する高橋良輔教授(提供・京都大学)
写真1 記者会見で治験の概要を説明する高橋良輔教授(提供・京都大学)
写真2 記者会見で記者からの質問に答える高橋淳教授(提供・京都大学)
写真2 記者会見で記者からの質問に答える高橋淳教授(提供・京都大学)

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