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iPS細胞から目の主要部分細胞を作製 大阪大が世界初めて成功

2016.03.10

 ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から角膜のほか水晶体、網膜など目の主要部分の細胞を作ることに大阪大学大学院医学系研究科の西田幸二(にしだ こうじ)教授(眼科学)らの研究グループが世界で初めて成功した、と10日発表した。角膜についてはウサギへの移植に成功して治療効果を確認しており、眼科領域の再生医療につながる、と期待される。研究成果は英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。

 角膜は黒目の表面を覆う膜で、病気や外傷、化学物質などで傷つくと失明することがある。他人の角膜を移植しても拒絶反応が起きたり角膜提供者(ドナー)不足の問題などがあった。

 西田教授らの研究グループは、独自の手法を駆使してヒトのiPS細胞から角膜や水晶体、網膜など目の主要部分のもとになる細胞を含んだ同心円状の4層の小組織を作製することに成功。この組織から角膜上皮の前段階の細胞の薄いシートを作って角膜がないウサギに移植したところ角膜機能を持つことを確認した、という。

 iPS細胞は、皮膚や血液など特定の働きを持った細胞に複数の遺伝子を導入して受精卵のように体のさまざまな細胞に変化する能力を持つようにした細胞。山中伸弥(やまなか しんや)京都大学教授が開発して2012年にノーベル医学生理学賞を受賞。同教授は、現在、拒絶反応が起きにくい他人のiPS細胞を保存する「iPSバンク」計画に力を入れている。

 iPS細胞を利用した再生医療としては、14年9月に理化学研究所のグループが目の病気を患う患者の皮膚から作ったiPS細胞を網膜シートにして患者に世界で初めて移植して成功している。眼科領域のほか、パーキンソン病やアルツハイマー病、心臓病などへの再生医療応用研究が進んでいる。

 今回成果を発表した大阪大学の研究グループは、16年度中にも臨床研究実施計画を学内倫理委員会へ申請する方針という。研究は、科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)のプログラムの一環として実施された。

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