実験用動物やペットとしてなじみの深い日本のハツカネズミの詳しいルーツを解明した、と北海道大学などの研究グループが、このほど英国の生物学術誌に発表した。約4000年前には中国南部から、約2000年前には朝鮮半島からそれぞれ日本列島に移入したと考えられるという。ハツカネズミは人間の家屋を住みかとすることなどから研究グループは、日本人の起源を考える上で重要な発見としている。
ハツカネズミのルーツについては、これまで「南アジア亜種系統」と「北ユーラシア亜種系統」の2系統があることが明らかになっていたが、それぞれどの時代にどの地域から移入したか、など詳しいことは分かっていなかった。
北海道大学院地球環境科学研究院の鈴木仁(すずき ひとし)教授らと理化学研究所バイオリソースセンターによる研究グループは、国内に収蔵保管されているハツカネズミ約80匹のミトコンドリアDNAを解読した。これらは、著名な遺伝学者だった故森脇和郎博士らが世界の野生ハツカネズミのDNAを収集したもので現在でも「森脇コレクション」と呼ばれている。現在の保管先は国立遺伝学研究所と理化学研究所バイオリソースセンター。
ミトコンドリアは細胞内の小器官で、核とは別のDNAを持ち、核DNAと異なり遺伝情報が母方からだけ子に継承される。解読技術も進歩して最近では人類を含めた生物の祖先や進化を探る重要な手掛りになっている。
研究グループの解読の結果、ユーラシア産のハツカネズミは、異なる時代に3回にわたり「一斉放散」を大きく経験。一斉放散は、動物が氷期などの影響を受けて個体数を減らした後に急速な温暖化などによって激増すること。ハツカネズミの3回の一斉放散のうち、2回目は約4000年前に中国南部の珠江沿岸域と日本列島などで、3回目は約2000年前に朝鮮半島と日本列島で起きていることが分かった。縄文時代に当たる今から約4000年前に中国南部から、弥生時代に当たる今から約2000年前に朝鮮半島からそれぞれ日本列島に移入していたことを示しているという。
関連リンク
- 北海道大学プレスリリース「日本産ハツカネズミのルーツをはじめて特定 〜日本人の起源を考える上で重要な発見〜」