人工知能(AI)を活用してコンクリートのわずかなひび割れも高精度で検出できるシステムを産業技術総合研究所(産総研)と東北大学、民間の首都高技術(東京都港区)の研究グループが開発した。多数のコンクリート表面画像データをAIが学習しているため、デジタルカメラなどでコンクリート構造物を撮影するだけで表面のひび割れを自動的に検出できるという。
産総研などの研究グループによると、コンクリート構造物の高速道路といった社会インフラは、建設から50年を経過するものが今後加速度的に増加する。このため経年損傷対策の資金や専門知識を持つ人材の不足が大きな社会問題になっている。また、風雨など過酷な環境に長年さらされたコンクリート構造物の表面は、傷や汚れ、湿潤(雨水や排水などによりコンクリート表面がぬれる現象)などの影響を受けることから、従来のひび割れ検出技術では正確な検出が難しいという事情もあった。
このため研究グループは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトとして2014年度から「道路構造物ひび割れモニタリングシステムの研究開発」を、18年度末を目標に続けてきた。首都高技術が点検作業した際の道路橋やトンネルなどのひび割れサンプルデータ収集を、東北大学が路面のサンプルデータ収集などを、また産総研が画像解析技術とシステムの開発をそれぞれ担当した。首都高技術は首都高速道路の100%出資子会社。
今回開発されたひび割れ点検システムは、さまざまな状態にあるコンクリート構造物を撮影した多数の表面画像データを基にAIがひび割れ特有のパターンを学習している。このAIシステムをクラウド上に構築することにより、点検現場では点検担当者がデジタルカメラやスマートフォンで現場を撮影するだけでいつでもどこからでもひび割れを自動的に検出できる。表面に汚れや傷がある状態でも、幅0.2ミリ以上のコンクリートひび割れを、80%以上の高精度で検出できるという。
研究グループは、点検事業者を対象に今回開発したシステムをウエブ上で無料公開し、2018年度末まで試験利用してもらい、検出精度や作業効率などを検証する。実用化の段階では、作業時間をこれまでの10分の1程度に短縮することを目指すという。
関連リンク
- 産総研プレスリリース「コンクリートのひび割れ点検支援システムを開発・試験公開」