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コンクリートのひび迅速に検査 原子力機構など技術開発

2016.01.13

 コンクリート内部のひび割れなどを迅速、安全に見つける技術を、日本原子力研究開発機構、公益財団法人レーザー技術総合研究所、理化学研究所の研究グループが開発した。崩落事故につながるトンネル内壁のひび割れ検査などに威力を発揮する、と期待されている。

 トンネルや橋など高度経済成長期に国内で造られたコンクリート製社会インフラは多い。研究グループが今回、開発したのは「レーザー欠陥検出法」と呼ばれ、レーザーをコンクリート表面に照射して振動を生じさせ、その振動を別のレーザーで詳しく調べることで内部にひび割れなどがあるかどうかを見分ける技法。原理はJR西日本とレーザー技術総合研究所によって実証されている。

 研究グループは、高速動作が可能な振動励起レーザーや、コンクリート壁を素早くスキャンし、振動を計測できる高速掃引レーザー計測システムを新たに開発することで、欠陥の検出速度を従来の50倍に高めることに成功した。実際のトンネルでさまざまなタイプの欠陥が検出できることを検証・確認し、現在の打音法に代わる遠隔・非接触のトンネル安全性検査技術につなげたい、と研究グループは言っている。

 現在、トンネルや橋などのコンクリート検査法として使われている打音法は、検査員が表面をハンマーで軽くたたき振動させ、それによって発生した音を聴いて内部の状態を診断する。しかし、この方法は検査速度が遅く、膨大な数に上るトンネルなどの検査に時間がかかる上に、現場の検査員に危険も伴う。打音法に代わる高速・非接触な検査技術として期待される今回の成果は、政府が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究課題「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」から得られた。

 道路や橋などインフラの老朽化に加え、厳しい財政状況や熟練技術者の減少という難題に日本は直面している。新しい予防保全技術によりインフラ維持管理水準を向上させ、魅力ある維持管理市場をつくり、さらには海外展開に向けた礎も築く、というのが、SIP「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」の目的とされている。

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