南米チリにあるアルマ望遠鏡を使って誕生直後の“赤ちゃん星”(原始星)がガスを勢いよく噴き出しながら成長する様子を捉えることに成功した、と国立天文台などの研究グループが13日発表した。こうしたガスの噴出は「アウトフロー」と呼ばれ、回転していることをはっきりと観測できたのは初めてという。研究論文は同日付の英科学誌ネイチャー・アストロノミー電子版に掲載された。
国立天文台の廣田朋也(ひろた ともや)助教らの研究グループが観測したのは、地球から約1,400光年離れたオリオン大星雲の中に潜む巨大原始星「オリオンKL電波源I(アイ)」。質量が大きい星の形成領域としては地球に最も近いことから観測対象に選ばれた。
観測の結果、アウトフローの回転がこの巨大原始星を取り巻く円盤状のガスの回転と一致しており、廣田助教らはアウトフローがガスの回転による遠心力と周囲の磁場の力によって宇宙空間に押し出されていることを示す証拠としている。
巨大原始星の誕生と成長のメカニズムには多くの謎が残されている。廣田助教は「今後アルマ望遠鏡がさらに高解像度化することにより、多くの巨大原始星で今回と同じような観測が行われて、アウトフローの駆動メカニズムや大質量の星の形成メカニズムの理解が進むと期待している」などとしている。今回の研究には国立天文台のほか、九州大学や山口大学、韓国天文宇宙科学研究院などの研究者も参加した。
アルマ望遠鏡の正式名称は「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計」で、2011年に観測を開始した高い解像度を誇る電波望遠鏡。日本と米国、欧州などが国際協力でチリ北部にあるアタカマ砂漠の標高約5,000メートルの高地に建設した。直径約12メートルのパラボラアンテナ66台をつないで1つの巨大な望遠鏡のように運用する。日本は国立天文台が運用を担っている。
関連リンク
- 国立天文台プレスリリース(1)「産声から探る巨大赤ちゃん星の成長」
- 国立天文台プレスリリース(2)「産声から探る巨大赤ちゃん星の成長」