世界の都市の二酸化炭素(CO2)濃度の比較で、中国や北米などの都市が高いことが、日本の温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」のデータを基にした推計で明らかになった。東京は比較対象都市の中では低かった。環境省と国立環境研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)がこのほど発表した。
同研究所やJAXAなどの研究、分析グループは、「いぶき」が2009年6月から14年12月までの間に観測したデータを基に、世界の主な都市とその周辺の人為的に排出されるCO2濃度を約100キロ四方ごとに推計、推計値を出した。
その結果、観測期間の対象都市の最大値は中国の北京周辺の濃度が6.2ppmと目立って高く、米国ロサンゼルスは同3.5ppm、ピッツバークは2.1ppm。また中央アジアのウズベキスタンは2.8ppm、メキシコのアカプルコが2.7ppm、インドのコルカタは2.1ppmだった。また東京は0.5ppmと低かった。
これらの結果について研究、分析グループは、北京やロスについては人口密集地や近くに火力発電所があることなどが大きな要因とみている。その他の都市も油・ガス田開発などを含めた活発な産業活動によるとみている。東京が低かったのは他の地域で作られた電力を使用していることが起因しているとみられる。
地球温暖化対策の新しい枠組みとして昨年12月に採択された「パリ協定」は、協定参加各国に温室効果ガスの排出状況の報告を求めている。国立環境研究所やJAXAは各国の排出量の監視に活用できる可能性がある、としている。
CO2の排出実態を正確に把握し、排出量を効果的に減らすためには、火力発電所などの大規模発生源での人為的な排出状況を精度よく監視することが重要とされる。CO2は植物による光合成や森林火災、海洋による排出や吸収の影響も受けるため、人為的な排出量を自然の排出量と区別する必要がある。研究、分析グループは「いぶき」の観測データや地上の大規模発生源データなどを独自の手法で分析、解析して人為的な起源のCO2濃度推計値を出した。
「いぶき」は世界初の温室効果ガス観測専用の衛星。2つの観測センサー(センサ)を搭載し、 太陽電池パネル(パドル)を広げると、全長は約14メートル。地表で反射した太陽光が大気中のCO2分子に吸収される原理を使ってCO2濃度を計測する。2009年1月に打ち上げられ、現在も観測を続けている。



関連リンク
- 国立環境研究所プレスリリース『「いぶき」(GOSAT)観測データによる大都市等の人為起源二酸化炭素濃度の推定結果について』
- JAXAプレスリリース『「いぶき」(GOSAT)観測データによる大都市等の人為起源二酸化炭素濃度の推定結果について』