農林水産省と国土交通省は9日、気候変動の影響を受けやすい沿岸部(海岸)の対策について考え方をまとめ、公表した。沿岸部の取り組みだけでは限界があるとの前提に立ち、多様な対策が盛り込まれている。今夏に策定が予定されている政府全体の「適応計画」に、今回示された考え方が盛り込まれる。
地球温暖化対策は、温室効果ガスの排出削減・吸収を図る「緩和策」と、地球温暖化は不可避として気候変動の影響や被害に備え、対処する「適応策」の二正面作戦が必要とされている。
農水、国交両省が公表した「沿岸部(海岸)における気候変動の影響および適応の方向性」は、まず気候変動によって海浜、堤防・護岸、背後地にどのような影響が出るかを示している。「海面水位の上昇、強い台風の増加などに伴う高潮、波浪の増大によって最大91%の砂浜消失」、「堤体の滑動・転倒、被覆工の被災、洗掘量の増加」、「堤防・護岸からの越波・越流や、破堤による浸水被害の増加」などが、推定あるいは懸念されるとした。
こうした深刻な影響に適応するためには、ハード・ソフト両施策の最適な組み合わせ(ベストミックス)で戦略的かつ順応的に進める必要があることを強調している。具体的には、「海岸侵食対策に関わる新技術を開発」、「粘り強い構造の堤防などを整備」、「高潮位時の逆流防止対策」、「市町村によるハザードマップ作成を支援」、「避難計画策定・訓練実施などを促進」といった多方面にわたる適応策を挙げた。
国連の専門家組織「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第5次評価報告書によると、今世紀末の世界平均気温は、1986〜2005 年の平均値に比べセ氏0.3〜4.8度上昇し、海面水位の上昇は最大82センチメートルと予測されている。
関連リンク
- 水産庁プレスリリース「『沿岸部(海岸)における気候変動の影響および適応の方向性』の公表について」