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基盤的経費削減に危機意識高まる

2015.04.01

 国立大学に対する運営交付金など研究開発に関わる基本的な活動を支える基盤的経費が削減されていることに対する研究者や有識者たちの危機意識が強まっていることが、3月30日に科学技術・学術政策研究所が公表した調査結果でも裏付けられた。

 この調査は「科学技術の状況にかかわる総合的意識調査(NISTEP定点調査)」と呼ばれ、毎年実施されている。調査の対象者は、大学や公的研究機関で指導的立場にある研究者、重要研究プロジェクトの中心研究者のほか、産業界の有識者やシンクタンク・マスメディアで科学技術に関わっている人まで約1,500人。毎年、同じ人に同じ質問をすることから「定点調査」と呼ばれる。

 第4期科学技術基本計画がスタートした2011年度の調査と今回の調査結果を比較したところ、悪い方向に最も大きな変化が見られたのは「研究開発にかかる基本的な活動を実施するうえでの基盤的経費の状況」という質問に対する答えだった。この調査はそれぞれの問いに対し、「不十分」という評価から「十分」という評価までを6段階で調査対象者に答えてもらう。この結果を10段階評価に換算し、その平均値(指数)を出す。2011年の調査と今回の調査を比べると、4年間で調査対象者の意識は、0.43ポイント悪化し、2.5となった。この数字は判定枠で最も不十分とみなされる「著しく不十分との認識」(2.5未満)に入る。もともと研究開発に関する基盤的経費が不十分と見る人が多かったのが、さらにそうした見方が強まったということだ。

 不十分とみる人たちの見方は「人件費確保のため、経常的に配分される研究費は減少」「運営費交付金の減額や電気代の値上げにより、基盤的経費は大幅に減少」「基盤的経費だけでは研究できない」「外部資金が獲得できないと研究がほぼ止まってしまう」といったものだった。

 次に悪化程度が大きかったのは「研究施設・設備の程度は、創造的・先端的な研究開発や優れた人材の育成を行うのに十分か」という質問に対する答え。0.42ポイント低下して4.5になった。続いては「現状として、望ましい能力を持つ人材が、博士課程後期を目指しているか」で、0.40ポイント低下の3.2だった。ただし、これらの不十分度合いはそれぞれ「不十分」(3.5 以上〜4.5未満)と「不充分との強い認識」(2.5以上〜3.5未満)の範囲に入るので、「基盤的経費の状況」よりまだましという結果といえる。

 基盤的経費に関しては日本学術会議の科学者委員会学術体制分科会が既に2008年8月、「わが国の未来を創る基礎研究の支援充実目指して」と題する提言を公表し、是正を訴えている。提言は、基礎研究の充実を図るため「科学研究費に代表される競争的資金による基礎研究への支援をより強化する適切な施策を講じる」ことと併せて、「基盤的経費を増額し、競争的資金との二本立てによる研究支援(いわゆる「デュアルサポートシステム」)の破綻を防ぐための施策」を強く求めていた。「大学・研究機関で行われる知の創造活動を展開させるべき基盤的経費(運営費交付金、経常費補助金)が、国の歳出改革により毎年大幅に削減されており、基礎研究の根幹が揺るがされている」と強い危機感を表している。

 研究者の育成に関しては、特に任期付き研究者の増加など、博士号取得者の置かれた厳しい状況について、いろいろな場で問題とされている。今回の調査では、望ましい能力を持つ人材が、博士課程後期を目指していないとみる理由として「優秀な人材は修士課程から企業へ就職」「 優秀な人材は臨床現場への進路を選んでいる」「経済的理由による進学の断念」「学生の学力の低下」などが挙げられていた。

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