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博士課程の立て直し目指し日本工学会が講演会

2008.04.21

 博士号を取得しても働く場がない、いわゆるポスドク問題を深刻に考える日本工学会が講演会「博士後期課程修了後のキャリアパス多様化に向けた学協会の役割」を23日に東京・芝の建築会館ホールで開催することになった。

 岸輝雄・日本工学会会長(物質・材料研究機構理事長)は、「大学が博士をきちんと育てないと、日本社会に求められているイノベーションの達成どころか、小・中・高校生の向学心の低下にもつながる」と、大学院とりわけ博士課程強化の重要性を訴えている。

 日本工学会によると、理工系大学院における博士後期課程への進学率は低下しており、優秀な人材は修士課程修了後に就職する傾向が強い。この傾向に歯止めをかけるため、後期課程に進学する学生へのリクルーティングアドバイザー(RA)などによる経済支援を積極的に行う大学が増えている。しかし、より大きな問題として学位取得後のキャリアパスへの不安がある。

 この理由としては、博士後期進学者の多くが、学位取得後に大学や研究機関への就職を望んでいる一方、これら大学や研究機関の研究職ポストは限られているため熾烈な競争になっている現実がある。また、これまでの大学院博士後期課程における教育が指導教員の専門分野における研究者養成一辺倒であったために、一般に修了者の視野が狭く、柔軟性に欠けるとみる企業が積極的に採用する状況になかったことも、博士号取得者の活躍の場を狭める原因となっている。

 こうした状況を打破するため、講演会では博士後期課程における教育、研究指導が今後どうあるべきか、そしてこのために学協会が果たすべき役割について、学協会、大学、企業、マスコミなどが参加し幅広く議論したい、と日本工学会は言っている。

 研究開発の場では、博士号取得者が中心になっているのが日本以外の先進諸国の常識となっており、「日本の大学院改革は緊急の課題」とする声が、相澤益男・総合科学技術会議議員(前東京工業大学学長)など指導的立場にある研究者たちの間に強まっている。

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