科学技術振興機構(JST)は2月25日、独創的な研究成果に基づく知的財産の創造と活用を通して日本の科学技術の発展に寄与した優れた研究者に贈る知的財産特別貢献賞を、東京工業大学フロンティア研究機構の細野秀雄(ほその ひでお)教授(61)に授与した。授賞理由は「高精細ディスプレイに適した酸化物半導体の発明」。都内で開いた表彰式で、JSTの中村道治(なかむら みちはる)理事長が賞状とメダルを手渡した。
細野秀雄教授は1995年、透明アモルファス酸化物半導体の設計指針を独自に提唱し、JST創造科学技術推進事業(ERATO)などのプロジェクトで、In-Ga-Zn-O(インジウム・ガリウム・亜鉛からなる酸化物)を活性層に使った薄膜トランジスタを作製し、高い電子移動度、低いオフ・リーク電流特性という優れた材料物性を初めて明らかにした。
細野教授らが2003年、04年に相次いで発表した論文が契機となり、In-Ga-Zn-O酸化物の実用化研究が始まり、ディスプレイ業界に開発競争を巻き起こした。数社が既に、身近なスマホなどに実用化しており、次世代の高解像度ディスプレイの革新的技術になっている。この技術の発明は、JSTが保有する基本特許とともに、東京工業大学や各企業の周辺特許を含めた数十件の特許群から構成され、JSTがライセンスを一括して提供している。
受賞あいさつで細野教授は研究開発や特許紛争などを振り返り、「研究は権力にこびない高い志が必要です。特許をJSTに全部パッケージ化したのもよかった。この技術は全世界にオープンにした。企業も酸化物半導体に着目し、熱心に開発してくれた。ここまで発展するとは当初思わなかった。自分たちの技術が世の中に貢献していることを示すことは若い大学院生や学生を元気づける。この賞をいただき、ありがとうございます」と語った。
知的財産特別貢献賞は、JSTが2011年に創設した。11年の第1回受賞者は、青色発光ダイオード(LED)を開発し、14年にノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇(あかさき いさむ)名城大学終身教授だった。ノーベル賞を先取りした賞としても注目される中、第2回受賞者として細野秀雄教授を選んだ。
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