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鉄を含む新たな超電導物質発見

2008.02.19

 これまで知られていた金属系、銅を主成分とする酸化物系とは、全く異なる「第3の超電導物質」を、細野秀雄・東京工業大学フロンティア研究センター教授らの研究チームが発見した。高温超電導材料の新しい鉱脈の発掘、として今後の研究の進展が期待されている。

 細野教授らが発見した物質は、鉄を主成分とするオキシプニクタイド化合物LaOFeAsと呼ばれ、電気絶縁性であるLaO層と金属的電導を示すFeAs層が交互に積み重なった結晶構造を持つ。そのままでは、低温にしても超電導は示さないが、酸素イオンの一部をフッ素イオンで置きかえると超電導体に変わることが突き止められた。超電導状態に変わる転移温度は、フッ素イオンの量を増やすことで高めることができ、絶対温度32度(32K=摂氏マイナス241.15度)まで上昇することが確かめられた。

 超電導物質は、古くから知られていた金属系の物質とは全く異なる銅系酸化物材料が1986年にベドノルツとミューラーによって発見され、世界的な超電導研究開発競争をもたらした。この結果、転移温度が液体窒素温度(77K)を越える物質が連続して発見されたが、93年に130K(高圧下では160K)の銅水銀系酸化物が見つかって以来、転移温度の更新は止まっている。

 細野教授らは、科学技術振興機構の基礎研究事業として、元素の組み合わせを変えることで絶縁体や半導体、さらには磁性半導体や強磁性体にもなるLnOMPn(Ln=ランタン系元素、M=遷移金属、Pn = P,As,Sb)系化合物の研究を進めている。この化合物中の遷移金属として鉄を使った物質が超電導体になることを1年半前に発見、組成の一部を変え、より高温で超電導を示す物質がないか探した結果、遷移温度が30Kを越す今回の超電導物質にたどり着いた。

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