東京電力は21日、福島第一原子力発電所の事故について「津波に対する備えが不十分だったことが根本的な原因」とする調査報告書を公表した。
津波襲来以前に地震による施設への影響があったかどうかについては「安全上重要な機能を有する主要な設備は、地震時および地震直後において安全機能を保持できる状態にあり、地震による損傷は確認されていない」としている。さらに、耐震重要度の低い機器についても「機能に影響する損傷はほとんど認められていなかった」と言い切った。
こうした結論の根拠として、津波襲来まではプラントの状態を表していた測定結果と、観測記録を用いた地震応答解析結果、さらに目視による確認を挙げている。高圧注水設備に異常はみられず、主蒸気流量、格納容器圧力・温度、格納容器床に設けられているサンプ(水槽)の水位記録から、「配管にも異常はない」とした。さらに、地震応答解析で主要設備の耐震性を評価した結果でも、評価基準値以下の計算値となった、としている。
事故で周辺にまき散らされた放射性物質は、原子炉建屋で水素爆発が起きた1、3号機ではなく、原子炉建屋内の水素爆発が確認されていない2号機からであることを、既に東京電力は認めている。報告書は、3号機の水素爆発によってがれきが飛散した影響でベントに必要な空気作動弁が閉じてしまうなど、ベント作業が困難を極めたことを明らかにしている。
結局、「15日午前6時14分ごろ、大きな衝撃音が発生し、ほぼ同時期に圧力容器の圧力が低下した」と、2号機では、炉心溶融によって格納容器内にたまった放射性物質を含むガスを少しだけ外部に放出するというベント作業に失敗したことを認めている。
2号機のベントについて、2月に公表された「福島原発事故独立検証委員会」(民間事故調)の調査報告書は「結局、実施されたか否かについては今のところ分かっていない」としていた。