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民間事故調が福島第一原発事故の検証報告書を発表

2012.02.29

 昨年3月11日の東日本大震災に伴い発生した東京電力福島第一原発事故について調査してきた「福島原発事故独立検証委員会」(いわゆる「民間事故調」、委員長・北澤宏一・前科学技術振興機構理事長)は28日、全体で第4部13章の404ページに及ぶ調査・検証報告書をまとめ発表した。

 民間事故調は「政府の事故調」「国会の事故調」とは別の立場、視点で福島第一原発事故を検証するために、一般財団法人 日本再建イニシアティブ(船橋洋一理事長)が昨年10月に設置した。北澤委員長ら科学者や原子力の専門家、法律家など6人の委員で構成され、当時首相の菅 直人氏や当時官房長官の枝野幸男経済産業相などの政治家や原子力安全・保安院、原子力安全委員会、官僚関係者などの約300人から話を聴いた。東京電力経営陣は聴取に応じなかったという。

 報告書の第一部「事故・被害の経緯」では、事故発生後の現場や首相官邸など国の状況対応などの問題点を指摘し、さらに大気や海水、土壌や食品などの環境に放出された放射性物質の影響とその対応ぶりについて、「低線量被ばく」の解説も加えて検証している。

 第2部の「原発事故への対応」では、官邸の初動対応、官邸による現場介入の評価と課題のほか、「リスクコミュニケーション」問題として政府の国内外への情報発信の仕方と国民の不安、現地対応としての「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)」の活用や避難指示での問題などに言及している。

 第3部「歴史的・構造的要因の分析」では、原子力の安全についての国や電力側の技術的思想や事故対策などの不備を指摘し、これまでの原子力安全・保安院と電気事業者との「もたれあい」を批判し、規制当局としての原子力安全委員会の対応能力のなさを指摘している。また東京電力については1節を設けてその「隠蔽体質」や安全対策の欠如の問題を批判している。さらに「安全神話」を醸成してきた「原子力ムラ」問題についても第9章で展開している。

 第4部「グローバル・コンテクスト」では、今回の原発事故やその対応の問題点を、世界的な文脈(コンテクスト)から整理し、国際社会への情報提供の重要性や事故収束に向けた国際協力のあり方などについて述べている。

 特に第13章では「最終章:福島第一原発事故の教訓 ? 復元力をめざして」と題し、事故は東電の組織的怠慢による「人災」であること、SPEEDIは住民の「安心」を買うための「見せ玉」だった ? などと指摘している。さらに「絶対安全神話の罠(わな)」「セキュリティなき安全」「危機管理とリーダーシップ」などついても、あらためて項目を立ててまとめている。

 今回の福島第一原発事故についてのまとまった報告書はこれが初めて。民間事故調ではこの報告書の英語版を今夏までに発行し、世界に向けて発信する予定だ。また民間事故調は、3月11日を「原子力防災の日」とすることを報告書の最後で提案している。

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