カーボンナノチューブの特性を生かし、体の中に埋め込んでも発電できる新たな光熱発電素子を産業技術総合研究所の都英次郎 ・健康工学研究部門ストレスシグナル研究グループ研究員らが開発した。ゼブラフィッシュやラットに埋め込んで実際に発電できることも確認しており、心臓ペースメーカーなど体内埋め込み型医療機器の新しい電力供給手段に成り得ると期待されている。
この光熱発電素子は、カーボンナノチューブを分散させた樹脂フィルムを用いているのが特徴。樹脂フィルムは近赤外レーザー光によって発熱する。フィルムに密着した熱電変換素子に温度差を生じ、この温度差によって電力をつくり出す仕組みだ。近赤外光は生体内を透過しやすい上、臓器などへの影響も少ないことから、埋め込んだ医療機器に体の外から近赤外レーザー光をあてるだけで、人体に負担をかけずに電力を供給できる。
現在、心臓ペースメーカーの動力源としてはリチウム電池が広く使われている。しかし、寿命が10年程度で、電池の交換などの外科手術が患者の大きな負担になっている。
カーボンナノチューブは、1991年、飯島澄男氏(名城大学教授、産業技術総合研究所ナノチューブ応用研究センター長)によって発見された。次世代ナノ材料の有力候補としてさまざまな応用が期待されており、飯島氏の論文は、世界でも引用されることの多い論文の一つとなっている。